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プロって何?アマって何?

最近、お客様とあるいはネット上でこういった話を立て続けにしていたもので、僕なりの考え方を(備忘録という意味合いも兼ねて)書いておこうと思う。
プロって何?って話である。コーヒーのプロって何よ、という話である。
コーヒーのプロといってもさまざまな職種がある。一概に「これこれこうだからプロ」と言いあらわすのは難しいように思うかも知れない。
農園経営のプロ、カッピングのプロ、カフェの接客のプロ、流通のプロ、マシンのプロ・・・
いったい、プロである彼らの共通点は何なのか。「これこれこう」の部分にあてはまる共通項は何なのか。
どんな仕事でも「これこれこう」という部分は、実は同じである。

「お金をちゃんと貰うからプロ」

である。
法律用語に「業として」というのがある。
いろいろな法律にこの用語が出てきて、全て同じ意味であるというわけではないやっかいな用語であるが、主な意味はこーゆーことである。

不特定多数の相手に対して、報酬をもらって、継続して繰り返し行うこと

もう少しわかりやすく書くと、「不特定多数の」は、家族相手の肩叩き券などは当てはまらず、マッサージ店として営業するようなこと。「報酬をもらって」は、ボランティアで公園の草刈りをするのではなく、造園業の人がお金をもらって草刈すること。「継続して繰り返し」は、飲みに行ったら友達がサイフを忘れて飲み代を貸してあげた、というのは一回こっきりだけど、銀行が会社などにお金を貸すのは継続性があるってこと。
で、この「業として」というのがいちばん、プロの定義に近いと思うんだな。
ちゃんとお金を貰う、っていうのは、そういう意味なんだと思う。

家族親族依存で成り立つような仕事をやっているのはプロじゃない。
お金が貰えなくてもいいやという仕事はプロじゃない。
後々のことも考えず売り逃げやり逃げするような仕事はプロじゃない。

話がもとに戻るが、コーヒーに関する仕事をしている人がたくさんいて、彼らがプロであるためにはどうあれば良いのか、ということである。
自分がやっている仕事でちゃんとお金を貰うということである。
ロースターは豆を焼くということで、カフェならお客さんにコーヒーなどを提供することで、農園ならコーヒーノキを育てるということで、お金を貰うということである。
業界の巨人、スターバックスは、今のところ、ちゃんとお金を貰っている。スペシャルティコーヒーを深煎りにして、全自動のマシンを使用して、ミルクは少しばかり熱めにしてしまいがちで、シロップをたくさんかけてホイップをトッピングしていることに批判的な人もいるだろう。
しかし、彼らはちゃんとお客様からお金をもらっている。それも、世界中に出店できるほどのお金を、だ。
逆に、素晴らしい仕事をしていてもそれがお金につながらない場合がある。世界に類を見ない最高のコーヒーを抽出しても、お金がもらえなければ、それはプロではない。素晴らしいコーヒーを抽出している、それだけだ。
プロは、素晴らしかろうが素晴らしくなかろうが、コーヒーを抽出したらお金をちゃんと貰う。それも、ちゃんと継続した取引(商売)ができる程度以上に貰う。なんだったら余分にもらって二号店、三号店を出せるようなお金を貰う(スターバックスだってそうやってきたんだ)。
さて、プロでなければアマチュアだ。つまり、さっきの三要素、「不特定多数を相手に」「報酬をもらって」「継続して繰り返し」のひとつでも欠けていれば、それはアマチュアだ。
アマチュアは三つのどれかを(あるいはいくつかを、あるいは全部を)オミットできるわけで、このアドバンテージはものすごい。アマチュアが言いたい放題できる所以はココにあるわけだ。
いわく、マズイだのショボイだのヘボイだの・・・
ある一部分だけを切り取ると、どうしたってそうなるのだ。
不特定多数を相手にすると、あなた好みではなくなる可能性が高くなる。そうすると、文句を言う余地が出てくる。
報酬を貰ってやるわけだからコストを計算しなきゃならんわけで、妥協をせざるを得ない部分が出てくる。そうすると文句を言う余地が。
継続しなければならないわけだからその時だけ最高ならいいってわけにはいかず、平均点で勝負しなければならない。そうすると。
たとえば、コーヒーを例にとれば、最高の一杯を作るにはプロではなくアマチュアのほうが有利だ。
好みを知り尽くした誰かのために(たいては自分のために、だ)、コスト度外視で、特定の一杯で勝負できるわけだ。
プロとアマチュアは同じテーブルについているわけではない。そこ大事。
プロがお金を貰っている対象は、正確に言うとプロダクトそのものではない。プロダクトを含めたあらゆるものの総合点に対してもらっているのだ。
スターバックス風に言えば「素晴らしいエクスペリエンス」に対する対価を貰っているわけ。
個々の要素は100点ではないのだが、総合点が高い。
ハイアマチュアにバカにされながらも、総合点が高いプロはどんどんお金を集める。
ハイアマチュアに崇められ、奉られ、同業者も舌を巻くプロダクトを発信していても、総合点が低ければ、それはプロとして長く活動を続けることができないかもしれない。
むしろ、プロダクトが優秀であるということはプロであることの「必要かもしれない条件」という程度である。
プロがプロたる所以は、お客様からお金を貰っている、その一点である。
そしてお金を貰っているのはプロダクトにあらず、その活動全て(時には私生活までも)を評価されているのである。むしろプロダクトは一種の広告、あるいはエバンジェリストへの撒き餌に過ぎないのかも知れない。


Published in 雑記

One Comment

  1. おひさしぶりです。
    サービス業のプロダクトとは、エクスペリエンスだと思います。
    マクドナルドの「スマイル¥0(懐)」てのは実はトリックで、
    ハンバーガーとポテトとコーヒーの代金だと思って支払っている
    お金の中に、スマイル代も含まれているんだと思います。
    ただ、誰もそういう自覚がないだけです。
    とくに日本には、英語の「service」の意味を知っている人が
    少ないですから。
    serviceとは、報酬を目的とした無形プロダクトですよね。
    スターバックスの「プロダクト」は、たしかに優秀だと思います。
    でも僕は、スターバックスのコーヒーを美味しいと思いません。

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