ペーパードリップの大いなる誤解

ジャパンハンドドリップチャンピオンシップという大会がある。
日本スペシャルティ協会というところが主催している、ペーパーフィルターを使用したドリップコーヒーの味覚を競う大会だ。
ジャパンハンドドリップチャンピオンシップについて詳しく知る
んで、そのジャッジをやらせてもらったわけで、それについてちょっと雑感を。
(今日、東京予選二日目が終了して、予選の全ての日程を消化したので、ネタバレというかちょっと突っ込んだ話をしてみます。まあ問題は無いと思うんだけど・・・)
はい、これが本日のお題。
【コーヒーを美味しく抽出するって難しいんだね!】
何を当たり前の事を言っているんだ、という話なんだけど、僕らは意外なほどコーヒーの抽出について勘違いをしているようだ。
僕が感じたペーパードリップによるコーヒーの抽出に関する誤解を箇条書きにしてみる。
①スペシャルティだから高温、コマーシャルだから低温のお湯を使用する
→ベストなお湯の温度はそのコーヒーによって違うし、狙う風味によっても違うでしょう
②焙煎の深さによって湯温やメッシュを調整する
→焙煎の深さだけで湯温やメッシュを決めるのは危険です
③コーヒー豆の量に応じて湯量を決める
→豆の量と湯量はそれほど相関が無いでしょう
④蒸らしや抽出の時間は最適な解がある
→ある程度の幅には入るでしょうが、それほど狭い幅ではないでしょう
⑤この器具(ドリッパー、ペーパー)でないと美味しくできない
→器具で左右される割合はそれほど多くないでしょう
⑥点滴、細く、回数を分けて、注ぎ続けて、円を描くように、中心を太く、などの注ぎ方のテクニックが重要
→テクニックより条件設定のほうがよっぽど重要でしょう
⑦ペーパーは濡らす、あるいはペーパーは濡らさない
→そういうことより条件設定のほうが重要でしょう
⑧サーバーは温める、あるいは温めない
→そういう(ry
⑨濃い抽出のほうがより風味が抽出できる、軽い抽出のほうが飲みやすい
→よく聞く話ですがそんな簡単なものじゃないでしょう
⑩ペーパードリップのコーヒーは飲みやすい
→紙で濾されて成分が限定されてカップに入る分、より欠点を感じやすくなるとも言えるでしょう
もっともっとあるんだけど、とりあえず思いつくまま10個ほど書いてみた。
これらの項目意外にも、いろいろと定説や常識があると思うんだけど、それらも含め、意外なほどの誤解や勘違いがあると思った。
とにかく言えるのはただひとつ。
「抽出に関する全ての常識を疑ってかからないと、そのコーヒーに対するベストな抽出が出来ないよ」
この場合のベストとは「濃くもなく薄くもなく、つまりちょうどいい濃度で、尖ったところの無い風味でかといって欠けてる風味も無く、つまり過不足なく風味を抽出できていて、悪い風味が出てないけど良い風味はちゃんと出ていて、つまり抽出不足でも過抽出でもない抽出」のことだ。
そしてそういう抽出をするにはそのコーヒー持つ風味特性を、その焙煎特性を、そしてミルの性能を、ペーパーの、ドリッパーの、湯量の、湯温の、注ぎ方の・・・全ての特性をパズルさながらに組み合わせてベストな解を作り上げないといけないのだね。
とんでもなく大変ですよこれは。生半可じゃないです。ジャッジをやってみて、これほどまでに難しいものなのかと思い知らされましたよ。
何しろ、
同じコーヒー豆、イコールコンディションであるにも関わらずこれほどの差がついて、条件設定など各自創意工夫の末に抽出してもこんなに同じような抽出になる!
のだから。
焙煎した人が同じでも、焙煎の度合いが同じでも、ベストな抽出の条件はそのコーヒーによって変わる。これは間違いないようだ。
僕はコーヒーの抽出は「大雑把にこの条件設定で正解に近く、焙煎度やコーヒーの特性によって多少パラメータをいじってベストな抽出を探る」と思っていた。
中挽き 25g 300cc 90度 蒸らし1分 抽出2分、このパラメータを前後させてベストな解を探る、という感じだった。
しかしそれは大きな誤解(間違い?)だった。
クリティカルに影響を及ぼすパラメータは何か?
変わっても影響が少なく無視できるようなパラメータは何か?
まずこれを探るところがベストな抽出への旅のスタートだ。
全てを疑ってかかるということは、こうしたらこうなる、という常識を疑うことだ。
×こうしたらこうなる ○こうしても特に変化がない ということがあり得るからだ。
つまりそこの部分のパラメータは動かしたところで結果無視できる程度の影響しか無いわけだが、そこを動かすことで別のパラメータを動かしたと同じような結果を(巻き添え的に)発生させてしまうことがあり得るということを考えなければならないのだ。
これは本当に難しいことですよ。
何しろ、その別のパラメータもまた同じように結果無視できる程度の影響しか無いこともあるわけで。
いったい、何がクリティカルな影響を引き起こすパラメータなのか、それが見極められないと条件設定もままならないわけ。
(そしてここからが驚愕の展開。まさかの結末。旅の終わりがこんなことになるなんて)
そしてやっと最適な条件を見つけて、注意深く条件通りに抽出をし、そのコーヒーのベストであろうコーヒーをカップに落としてみたら、何のことはないそのコーヒーは「ああこのコーヒーは普通に美味しいね」という話なのだ!
ええええええええええ?こんだけ苦労して結果出てきたコーヒーが「普通に美味しい」だとおおおおおおお?
と言いたいのはわかります。しかしながらこれが普通に美味しいコーヒーなのですよ。
条件の揃ってないコーヒーは、この「普通」にたどりつけなかったコーヒーなのですよ。
というわけで、ペーパードリップというものに持っていたイメージと、けっこう違いません?

◆     ◆     ◆

さて、この話、特にペーパードリップに限ったことじゃなくて、僕の中に「こりゃ大変だ、エスプレッソだってもっともっと条件を詰めることができるだろうし、そのくせ要らない調整で四苦八苦してたんじゃねーの?滝汗」という不安要素を引き起こしているわけだ。ああコーヒー怖い。
ということで、僕がJHDCのジャッジをしてきました、という話の結論は「コーヒー怖い」ということになった。それでいいんかいと思うけど、まあ的外れってことでもないし、ま、いっか。


2 thoughts on “ペーパードリップの大いなる誤解

  1. ジャッジお疲れ様でした。
    大会には興味があったので参考にさせていただきます。
    参加に関しては個人的にやる気が起きないルールがあったので止めましたが。当日渡された豆を使うというのと、抽出量がわからない(これに関してはサーバーに目盛りなどないものと規則をよく読まず解釈したのですが誤解ありましたら失礼します)
    JBC以上に日本人が世界の上位に食い込んでいける部門だと思っていますので、毎年盛り上がって欲しいですね。
    当日の競技の感想などもありましたら、お聞きしたいです。
    ありがとうございました。

  2. くりふさんこんにちは。
    大会、出られるかどうか悩まれたみたいですね。今回が初回だったため、ちょっと戸惑うこともありましたが、おおむねスムースな進行となりました。運営の方たち、ジャッジの方たちの事前準備が良かったのだと思います。
    予選→決勝→世界大会とルールが違うので、予選通りのパフォーマンスで決勝を戦うことはできないし、優勝しても今度は世界大会ではまた戦略が違います。
    予選突破された皆さんはここから更に努力が必要なのだと思うと、出場される方は大変だなあという気持ちです。
    競技そのものは非常に簡潔で、時間内に決められた量のコーヒーを使用して決められた量のコーヒーを抽出するだけです(ルールブック通りです)。
    会場も和やかではありましたが、プレゼンが無いため、淡々と進んだ印象です。
    (おかげさまで、他の大会でよくある「時間が押す」ということが無く、むしろタイムテーブルを早めて終了することができました)
    つたない説明でどれくらいJHDCの様子が伝わるか非常に不安ですが、SCAJで決勝が行われますが、遠方とは思いますがもし可能であれば決勝の様子をご覧いただくといいかもです。
    ブログ訪問いただいてありがとうございました^^

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