テレビ生出演の裏話

l4you

先日、テレビ東京のL4YOU!(エルフォーユー)という番組に生出演させていただきました。ラテアートを室井滋さんに教えるというコーナーをやってきました。
その裏話をちょっと書いてみましょうかね。

出演依頼から当日までのバタバタ

ここに関して話し出すといろいろ長い話があるんだけど、かいつまんで言うと、出演予定日の三日前までは「オレオレ詐欺」的な話なんじゃないかとずーっと思ってた。
だいたい、僕がなぜラテアートという話である。ラテアートが僕より上手な人なんていくらもいるし、そもそも僕はラテアートが上手じゃないし。もっともらしい話を持ち掛けて、僕からお金を巻き上げようとしてるんじゃないか?おっとそうはいかないぜ!と思いながら、先方の言う「出演予定日」が近づいてきていたわけだが、三日前に先方より確認の電話があって、その時に詳しい話を聞いたので、ああこれは詐欺じゃなくて本物のテレビ生出演かと納得したわけである。
というわけで、三日前まで「テレビ出るよ~って宣伝しまくって、オチが『サギにあいましたスイマセンwww』ではかっこ悪いぞ」と思っていたので全然宣伝をすることなく、三日前から告知をしたので、放送後に「なんだよ教えてくれれば見たのに!」というご連絡をたくさんいただくハメになりましたよ。
さて、三日前になって、明々後日にはテレビ生出演でラテアートをしなきゃならないということになり、それまでなんにも準備をしていなかったため、あたふたと準備をしなければならなくなったのだが・・・

スタジオに持っていけるエスプレッソマシンが無え!

という問題をまず解決すべくトーエイ工業さんに電話をした。
シモネリのエスプレッソマシンやミトスというグラインダーでバリスタの皆さんにはお馴染みのトーエイ工業さんです。
URLはこちら http://www.toei-inc.co.jp/
快くアッピアとミトスを当日の朝お貸しいただけることになり、この問題は解決。ありがとうございますトーエイ工業さん!
あのかっこいいブラックイーグルをあちこちで見かけますね!また最近、エントリーモデルのオスカーがモデルチェンジしましたね!SSEの卸先さんで使っていますが大変好評ですよ!
と、御礼を申し上げまして、話を続けます。

当日、搬入するまで

朝、トーエイ工業さんに行き、マシンとグラインダーを借り出し、六本木に向かう。
道が混んでると困るなあと思い早めに出たのだけど、予想通り道が混んでてお昼ごはんをちゃんと食べる時間が取れなくて、コンビニでパンを買って、運転しながら食べた。
テレビ局の人からは13時半には入ってくださいと言われてたんだけど、ビル到着がすでに13時過ぎ、車を入れて手続きして局の人に連絡したらちょうど13時半ころになっていた。

「本番は16時からだから、15時までに完全に準備が終わってれば大丈夫だな、てことは14時には搬入が終わり、14時から15時までの一時間で設置と試し抽出してセッティング出してラテを作ってみればOKだな、よしこのスケジュールでバッチリだ」
と心づもりして局の人をロビーで待っていたのが13時半。ところが局の人が打ち合わせということで降りてこない。ロビーでモニターに流れるファイブオー(アメリカのテレビドラマ)を15分ほど見ただろうか、やっと局の人が降りてきてくれて、どのようにすればいいか指示をくれて、実際に車から荷物を下ろし始まったのが14時になった頃だった。

そして、安易に「台車は局で借りればいいか」と思っていたのだが、局の人に聞いたら台車は無いとのこと。むむむ、マシンとかグラインダーとかけっこう重いぞ。あとこまごましたものが入ってるダンボールが三つ。これを局の人と二人で手運びするのか。

搬入したはいいけれど・・・

「急いで設置して試し抽出しないと、ヤバイなあ」と思いながら、車とスタジオを3往復して(スタジオまでがけっこう遠くて、マシン運んでるときなんか手がプルプルした)、なんとかスタジオまで全ての荷物を入れ終わったのが14時半。
プロデューサー?の人が「じゃあリハを15時半からやりますねー」と言うので、よしなんとか1時間確保できた、これなら間に合う、と思って設置場所をどうしたらいいかとか、段取りはどうなってるのかと聞いたら、なかなか「こうしてください」っていうのがもらえない。なんだか、スタッフの皆さんで協議して細かいところを決めながらいまおおまかな段取りを決めてるって感じで、僕のコーナーの細かい話はどうやら後回しみたいだ。
と言って何もせずに時間が過ぎるのを待っていると間に合わなくなるので、みんな本番前で忙しそうにしてる(たぶん本当に忙しい)ところで勇気を振り絞って「電源入れて30分しないとエスプレッソ出ませんよ、早いとこ置く場所を決めて通電させないとマズイです」と、ちょっとアセりながら局の人(たぶん、アシスタントディレクターという立場なんじゃないかなこの人)にお願いして、半ば無理やりに設置場所が決まったのがもう15時近くなっていた。

電気が来ないんですけど、からの時間が無いんですけど

台を用意してもらって、とにかく設置場所が決まった。荷物はほどいてあるんだけど、どこに置くのかわからなかったので、ほどいただけになっていた。それらを一人でえっちらおっちらと台に運ぶ、運ぶ。運び終わってとりあえず通電させてボイラーをあっためようと「すいません、電気はどこから取ったらいいですか?延長コードはあります」と聞くと「おーい、電気ここまで引っ張ってこいや」とちょっと偉そうな人?が工事の人?に手配して、ほどなくしてセットの裏のほうからコードが出てきて、やっと通電。良かった。これであとはボイラー待ちだ。
……と思ったらこのコード、電気来てねえwww うんともすんとも言わねえwww
工事の人に電気来てないす、と言って数分後、なんだか裏側で工事してるのかガチャガチャやってる音が聞こえた後、無事通電。やっとですよやっと。もうリハまで15分くらいしかないんですけど。どうなるのこれ。背中は汗だくですよ冷や汗で。

リハってそういうことか!

ボイラーが沸いたギリギリくらい、リハが始まってしまった。
どうしようもない。時間切れである。
局の人に「リハの僕の出番まで作業しててOKですか?と聞くと、今はリハだから大丈夫、本番は音たてるとダメだからねと言われたので、自分のコーナーのところまで試し抽出をしてセッティングを、と作業を始めたのだが・・・実はリハは30分しかないのだ。あれこれ端折ってやるので(録画の部分とかは端折る)、スタジオでやる部分だけを進めていくから、僕の出番まではあと10分くらいしかないよと言われた。マジですか、いまボイラー沸いたとこですよ、グラインダーのホッパーにまだ豆入ってないすよ。
というわけで、10分で調整しながら抽出を三回、これでセッティング出す。出番のリハでラテ作って、スチームの調子を合わせる。これで行こう。と決めた。ぶっつけ本番に近いギリギリのところだが、しょうがない。

で、開けておいたスチームが出はじめてボイラーが沸いたことを知り、抽出ができそうなところで試し抽出をしたら、案の定メッシュがズレてる(当たり前)。なおスチームチップがスタンダードのものが付いてることを知り、普段はラテアートチップを使用しているのでこれはミルクのスチームにはちょっと調整が必要だなと思った。とりあえずエスプレッソはあと2回で合わせるぞとミトスのダイヤルに手を伸ばしたところで後ろから声をかけられた。
「あーすいません、ラテアートって実際どうやるんですかね? 流れを決めたいんで」
いきなりの不意打ちの抜き打ちテストみたいな質問である。もうすぐ本番が始まるというのに、僕が何をやるか、いまから流れを決めるというのだ。

えーっと、豆を挽きます、エスプレッソを抽出します、ミルクをスチームします、注ぎで丸を描きます、スプーンとピックでクマさんを完成させます。ひとつ当たり、がんばって2分でイケます。え?みっつ作る?最低5分かかりますよ、4分でやれないかって、えーっとエスプレッソを抽出しとけばなんとか、ああ、ミルクのスチームは前もってはできないんです、僕の分はコマーシャルの時間に作っておいてっていうのはあんまりおすすめできないですっていうかそれだと僕あんまり来てる意味ないです、室井さんと草野さん同時にやるなら時短になりますねそりゃまあ、ていうか室井さんと草野さんはその時に僕がやるのを見てぶっつけでやるんですよね、僕が指示を出してお二人に上手にやってもらえというのはハードル高いですね、しかも教えながらって時間が余計にかかりますよ、でもその時間でやってもらうしか?ハア、ではなんとかやってみたいと思いますが、ええ、スチームは前もってはできないんですよ、ていうか僕はこのあと何回か抽出したり練習できるんですかね?時間が無い?もう本番始まる?マジすかまだ一回しか抽出してませんが、ええ、それはもうどうにかします、で流れはこんな感じでやってくださいって、えーっと僕はどうすればいいんですかね?コーナー始まったらこうして、アナウンサーさんがこう言ったらこうして、そのあとこの作業を速やかに始めて、で4分以内で自分のラテアートをやり終えて室井さんと草野さんのカップを作りラテアートを教えながらほどこしてもらうと、時間的に難・・・そうですよね、やるしかないですよね、でこのあと僕、何回か抽出できないですかね?できない?本番ですよねわかりますブシューとか音たてるのまずいですよね、はいがんばります、リハはもうおしまい?カップはこの角度でやってくれ?手をここまで伸ばして?ええ、できますよ、カメラがこっちからくるんですね、なるほどそうするとここまで出さないとですね、はいやりにくいけどできなくはないです、はい流れは理解できました、忘れないようにもう一度やってみ・・・ああもうリハおしまいですねはいがんばります大丈夫かなオレ・・・

で、本番を迎える。

さっきの一回の抽出から、グラインドの秒数を0.5秒伸ばすことにした。豆はたっぷり1㎏持ってきたが、まだ20gしか使ってない。牛乳も念のため5本用意したが、まだ使ってない。

レギュラー出演者の皆さんと室井滋さんが入ってきて、カウントダウンが始まる。
本番が始まった。室井滋さん、やっぱり猫が好きのころから変わんないなあなどとぼーっと生放送をスタジオの隅のほうから見ている。
僕はもともと、人前だとかそういうシチュエーションであんまり緊張しないタチである。大勢の前でしゃべるとかそういうのでアガるというのはあまり経験がない。だから、このあとすぐ生出演というこのときにも、頭の中は繰り返し「4分間」のシミュレーションをし、どうやったら4分でミスする確率を減らし、なおかつ最大限ラテアートの魅力を伝えられるかという手順を考えていた。
局の人が「いいですか、コマーシャルあけたら出番です。よろしくお願いします」と声をかけに来た。そろそろ~っとすり足でセットの中に移動し、数分流れるVTRのコーナーのあと、いよいよ本番である。

本番まであと3分。問題は二つある。
ひとつは、メッシュがちょっと合ってないのだが、メッシュ調整をする時間がもはやありませんということである。次の一回が本番の一回となるわけなのだが、メッシュはもう変えられない。
さきほどの抽出速度から、コンマ5秒長く挽いても大丈夫だろうと踏んで、時間で合わせることにした。
※ミトスはグラインドしている秒数が0.1秒単位でデジタル表示される。挽くスピードが速いタイプなので、0.5秒長くするのはかなり多く挽かれることになる。抽出が一発勝負の場合、出ないのが最も困るわけで、出ないくらいならシャバシャバのほうがマシというわけなのだが、そこは意地でもシャバシャバのエスプレッソのままでなんか本番をやりたくないわけである。
エスプレッソはダブルのポルタフィルタで2カップずつ2回取る。合計4カップ取れるのでもしひとつこぼしたりしても予備がある。もし抽出に失敗しても、最悪は3回抽出できる時間が取れるはずだ。
抽出が可能な時間(VTR入り)になり、試し抽出より0.5秒多く挽いてみたら、意外とこんもりしてしまった。粉が山と積まれたバスケットのビジュアルにものすごい冷や汗をかいた。「これ(エスプレッソが)出るわけねえ滝汗」と思うほどの粉の量なのだが、先ほどの抽出から考えて、このくらい盛らないとちゃんとクレマのあるエスプレッソが出ないはずだ!と心を強く持ってタンピングしてポルタフィルタをセット、心の中で祈りつつボタンをぽちっとなした。
ポタ…ポタ…ポタ…ツー……
よっしゃああああああ!狙い通りのエスプレッソが出たああああああ!
ということで二回目の抽出も同じ秒数で同じようにクレマがたっぷりのエスプレッソを抽出することに成功。
余裕をもってスタジオにカメラが戻ってくるタイミングを待つことができた。

カメラのそばの人が20からカウントダウンをはじめ(20からカウントダウンするのね。知らなかった)、カメラがスタジオに戻り、僕の出るコーナーがスタートした。アナウンサーに紹介され、挨拶などをして、室井滋さんが「同じ滋だ!」などとアドリブを入れてくれて、なごやかな雰囲気で進んでいく。雰囲気はなごやかだが、僕はこの後のタスクを失敗せずにすべてパーフェクトにこなすべく集中している。ただし、笑顔で。

そして二つ目の問題がやってくるわけである。スチームチップの問題である。僕は、シモネリは、SSEのマシンも他店のマシンも、ほとんどラテアートチップでしか使ってないのである。さっきリハの前には、スタンダードなチップの荒々しいスチームの出方にややおびえてしまったのだが、よく考えたらマルゾッコに比べたらまだマイルドな出方だから、なんとか初回の自分で描く用のミルクで合わせていけるはず、と半ばやけくそな思い込みでスチームを始めた。
マシンの設置場所の関係でスチームをしているときはカメラに背中向きになるのだが、背後ではアナウンサーが時間通りにコーナーを進行している。さすがプロである。僕がスチームをミスる可能性など微塵もないという進行である。スチームし終わって「あ、すんません、このチップに慣れてないんで失敗しました、もう一回スチームしますね」などとは口が裂けても言えない雰囲気である。どうあっても一発でスチームを成功させねばならぬという一心で、なんとかスチームできた。やっぱりラテアートチップに比べると速え。

「じゃあくまさん描いていきますねー」

自分用のくまさんを作り終わって、すかさず次の室井さんと草野さんのミルクをスチームせねばならない。くるっと後ろを向いて、すでに計量してあるミルクピッチャーを手に取る。
「これ、こぼさずスチームできるのかな……」
実は、まさか2杯取りのスチームするなど想像だにしなかったので、12オンスのピッチャーしか持ってきてなかったのである。あるが、時間の関係で2杯取りしなければならなくなったのだが、12オンスで暴れん坊将軍のチップで240mlのミルクをスチームするとかかなり綱渡りである。たぶん、あふれる。

あふれなかった。良かった。しかも二つのカップにわりと均質なミルクを注ぐことができた。ちゃんと一つ目のカップもまるーく描けた。二つ目のカップもゆるくならずにコントラストのある丸が描けた。素晴らしいじゃないか。

あとは、もういつものラテアートセミナーと同じで、手順を説明しながら顔を描いていってもらうということで、室井さんも草野さんも楽しんでやっていただけたようで何よりだった。室井さんは「よーしブタさんに」とオリジナリティを発揮されていて面白かった。

かくして僕の4分間の格闘は幕を閉じたのである。

戦い終わって日が暮れて

テレビのセットというのは大変に簡単に組み立てたりばらしたりできるものなのだな。
本番が終わり、お疲れ様~という声が何十回も聞こえた後、あっという間にセットは無くなり、スタジオはがらんどうになった。
僕はと言えば、マシンやグラインダーの清掃をし、小物を片づけ、箱詰めをしていたのだが、いつも間にやら次の番組のセットにチェンジということらしく働いているスタッフさんの顔ぶれも違う。
いつも思うのだが、イベントでエスプレッソというのは準備と片づけがけっこう大変だ。とくに、後片付けがけっこう大変というのがあんまり知られてない気がする。皆さん、お疲れ様~などと去ってしまうのだが、僕はその後小一時間かけて撤収するのである。

片づけをしながら考えるのは。
室井さんは、僕が夜中にテレビにかじりついて観ていた、やっぱり猫が好きの次女のレイコさんだった。いまでも、ちっとも変わらずレイコさんだ。

おまけ

テレビ東京に着いて、受付で名前を名乗ったら受付の人に「出演者様ですね」と言われた。たしかに、出演者であることは間違いないが。なんか僕に「出演者様」と言うのはおかしくないかと思って可笑しかった。

室井さんに握手してもらった。

出演料がもらえた。

そして急なお願いに快く応えていただけましたトーエイ工業さん、大変ありがとうございました。


One thought on “テレビ生出演の裏話

  1.  お疲れさまでした、知ったのが遅すぎて後の祭りでした、観たかったですな。残念。
    TV収録は時間に追われるから神経使って冷や汗ものですよね、私も経験あります。

    ところでトーエイ工業といえば、ホゼさんのオスカーはまだオーヴァーホールばっちりでまだ現役ですか?私のは電源を入れると水漏れするようになり、不調ながらもその後5年間は使い続けられましたが、とうとう廃棄かもしれません。涙。

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