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ケニアの貝はどんな味?

ケニアはアフリカ第二のケニア山を擁し、国土の大部分が標高1000mを超える高原となっている。雨季以外は強い直射日光により乾燥し、野生動物が高原を縦横無尽に駆け回るいわゆるサバンナというようなイメージが強いが、南東部ではインド洋に面しており、マリンアクティビティを楽しめるビーチリゾートが多数あることでも知られる。
もちろん、沿岸部では魚介が多く捕れ、シーフードが人びとの食糧となっている。日本ではお目にかかれないようなさまざまな魚、あるいは貝がマーケットには並んでいることだろう。
さて、コーヒーの欠点豆と言えば、虫食い豆、未熟豆、割れ豆などとともにメジャーである貝殻豆というのがある。未熟豆や死に豆など、収穫後の精製処理で比較的取り除きやすいものもあるが、貝殻豆はその段階で機械的に取り除くのが難しい。当然、そうなれば人の手で取り除くしかないわけであるが、ケニアの豆を焙煎すると、ハンドピック時に貝殻豆を取り除くことが多い。それだけたくさん混入しているということだがなぜケニアのコーヒー豆には貝殻豆が多いのだろう?
と、無理やり貝つながりでまとまったところで本題である。
ケニアを焼いてハンドピックしていると、本当に貝殻豆が多くてびっくりする。こんなに貝殻豆が入っているなら、1バッチ焼いたら一杯分くらいの貝殻豆が取れるんじゃないかと思ったのが今回のネタの発端。本当に一杯分取れるのか? 取れたら貝殻豆100%のコーヒーを飲んでみたいぞ! というわけでスタートです。パチパチ。
サンプルとして用意したのは「ケニア キアンジルファクトリー」生豆で2㎏。焼き上がりでおよそ1.7㎏ほどになる。今回、焼き豆の中から貝殻豆を探さなければならない都合もあり、生豆でのハンドピックはしていない。
いつも通り、スーパーでスペシャルな焙煎をして、冷却をして、ハンドピックを開始したのだが、今回はハンドピックで欠点豆を選り分けた後、欠点豆の中から貝殻豆をさらに選り分けるという二度手間をかけたわけで、ハンドピックをしながら「これでつまらん結果が出たらやだなあ」などと思いつつひたすら手を動かした。
じゃじゃーん。これが貝殻豆だ。
s1貝殻豆.jpg
二枚貝の片方みたいな形をしているので貝殻豆。ハンドピックするときはこれがひっくり返っていると見逃すので、トレイにざーっと広げてハンドピックするときには、一面が終わったら手でかき混ぜて裏面をチェックするとまた貝殻が見つかったりする厄介者だ。
およそ1.7㎏の中から取れた貝殻豆は9.5g。これが多いか少ないかはよくわからないけど、なんとか一杯分は取れたという感じだ。ちなみにセミクエーカーな貝殻、虫が食ってる貝殻などは捨てたので、正確には、1.7㎏のうちの健康そうな貝殻豆が9.5g、ということである。
s20貝殻豆測定.jpg
比較するために、さきほどハンドピックが終了している、商品として並ぶほうの豆も9.5g用意した。
s21ノーマル豆計量.jpg
ちょっと光の当たり方の関係もあるのだろうけど、貝殻豆のほうが黒く見える。これ、実際にちょっと黒かった。いわゆる「貝殻豆は火が通りやすく、焦げやすい」というのは正しいのかもしれない。
そして、ブレのない抽出のために「スマートコーヒーメーカー」を使う。これは生産終了品で、今は「パーフェクトブリューワー」という名前で少々マイナーチェンジして発売されている。
実にブレがなく、再現性の高い抽出器具である。こういう検証にもいいが普段コーヒーを飲むのにいつも通りの味をいつも飲みたいぞという方にはもってこいなのだ。
s24コーヒー豆とPB.jpg
まず、秤をミルの下に置いて、その上に貝殻豆用のスマートコーヒーメーカーを乗せて、秤をゼロにする。
s41PB貝殻ゼロにあわせる.jpg
そしてガーっと挽くと、9.5g出てきた。
s42貝殻粉投入.jpg
普通の豆も同じ手順で。
s43PBノーマルゼロに合わせる.jpg
ガーっと挽くとこちらも9.5g。
s44PBノーマル粉投入.jpg
0.1g単位で計っているのだからちょっとの粉残りも影響が出るぞと、挽き始めと挽き終わりにミルをガンガン叩いて粉を全量出させたのが功を奏したか。
そしてタイマーをセットしておく。
挽き目がドリップ用と同じなので、メーカー推奨の4分ではなく、短めの3分にする。
s45タイマー3分.jpg
次に抽出用のお湯を計量する。あらかじめよーく温めたピッチャーに、お湯を100gずつ注ぐ。同時にやってるから、温度の違いはほぼ無視できるレベルのはずだ。ちなみにお湯の温度は、練習でやったときに計ったらピッチャー内で88度になっていた。本番もほぼ同じだろう。
s54投入する湯量測定.jpg
そしてお湯の入ったピッチャーを用意できたら、スマートコーヒーメーカーにドバーっと注ぐ。
3分してタイマーがピピっと鳴ったところで同時に排出開始。今回は完全にコーヒーのしずくが切れるまで落とし切った。
s56抽出中.jpg
事前にカップを乗せた状態で秤はゼロにしてあるので
s55カップをゼロに合わせる.jpg
抽出した後の液体の量が計れる仕組みになっている。
s63抽出後液量測定.jpg
出てきたコーヒーが84g。100gのお湯を注いでいるわけで、16%が粉に吸われているわけだね。
ちなみにこれが抽出後の出し殻のコーヒー。
ここを見る限り、見た目の差はあまりないような気がするけどなあ。
s62抽出後のPB.jpg
ついでに、アタゴのコーヒー用Brix計で濃度を計ってみた。
これが貝殻豆。
s71tds貝殻.jpg
これが普通の豆。
s72tds計ノーマル.jpg
あれれ~? なんかヘンだぞ~?(脳内でコナンの声に変換を推奨)
これだけ条件をそろえたのに、貝殻豆のほうは1.13、普通の豆のほうは1.19である。ははあ、違うものだねえ。
なぜ違うかという検証はしないが、これだけ違いが出るということは覚えておいていいと思う。
ちなみに収率であるが、計算はしないけど今回は粉量と投入湯量と抽出後の液量が同じなので収率は同一であると判断。
さて、TDS計で計る前にブラインドで飲み比べたわけだけど、その印象は以下の通り。
カップA オレンジ、白桃、キャラメル、クリーン、軽い味だが心地よい
カップB プラム、チョコ、カップAと比較して若干レスクリーン、若干味の強さを感じる
といったところで、タネ明かしをしたら予想通りの、A=普通の豆、B=貝殻豆だった。
焙煎が進行しているという感じはあるものの、それほど焦げているとか焙煎度が上がっているという印象は無く、むしろ違いとしては質感が違うという感じで、クリーンさが多少悪くなり、シブ味を主体とする雑味を感じた。
しかし、その違いはあまり大きなものではなく、一粒入れば確実にわかるポテトやコッコなどと比較すると、その影響は弱いものと言っていいと思う。
(念のため申し添えるが、SSEとしては通常、ハンドピックする際に貝殻豆を見つけて故意に残すということはしていないわけで、SSE印の豆で貝殻豆混じりのコーヒーということにはならないように気を付けている)
というわけで、自家焙煎店でもないとなかなかできない貝殻豆100%コーヒーを飲んでみたよ、という記事でした。
最後に、ちょっと宣伝。
今回サンプルとして用意したコーヒーはコチラのページから通販できますよろしくお願いします。
ケニア キアンジルファクトリー マーズロースト – SUNSHINE STATE ESPRESSO
また、本文中に出てきた「アタゴのコーヒー用Brix計」「パーフェクトブリューワー」の2点もSSEにて絶賛販売中です。お求めになりたい場合はご来店いただくかもしくは通販いたしますので sse13feb@gmail.comまで「欲しいよー」とメール下さい。


Published in コーヒー