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カフェをやるのはやっぱり大変 2014年版

カフェを始めるのは大変だ。しかし、それを継続するのはもっと大変だ。
ということで以前にこんな、関係ありそうな記事を書いたことがある。

脱サラしてお店をオープンする人の8割がなぜ失敗するのか
廃業率、2位。

さて、最新の動向はどうなんだろうかと調べてみた。

まず、事業所数について。

いわゆる個人店と言われる、オーナーさんが自分でカウンターに立って、アルバイトを数人雇って(あるいは家族だけで)営業しているようなお店、いわゆる、タッチに出てくる南ちゃんちの喫茶店「南風」に代表されるようなスタイルのもの(今はもっとモダンなスタイルなところが多いけど)、そういう個人店というのはもはや絶滅危惧種に指定されるんではなかろうかという勢いで減っている。

1986年に15万か所以上もあった事業所(個人の喫茶店、カフェなど)が、その後20年でほぼ半減しているのだ。現在、およそ8万軒弱となっている。
いろいろと理由はあるだろうが、ひとつにはコーヒーチェーンやファストフード店に押されて減ってしまったという面もあり、それらの大手資本の出店が個人店が減った分を数の上では大きく補填しており、喫茶を提供する事業所の総数というのは、同じ1986年からの20年で言えば、16万強から30万弱と、1.8倍に増えている。増加のペースは2000年頃を境に鈍くなり、その後は30万軒にゆるく近づきつつ微増となっている。
ざっくりした計算であるが、30万の喫茶提供事業所中、個人店が8万ということになると、割合で言えば四分の一ということになる。

チェーンのお店が増えていること、個人店が減っていることはなんとなく実感としてわかっていたが、個人の喫茶店、カフェが全盛期の半分になってしまっているというのはびっくりだ。そこまで減っていたか。

次に、開廃業率である。

開廃業率という言葉は、簡単に言うと、その年に新規に始まった店の割合と、その年に商売をやめたお店の割合である。
日本のすべての業種における開業率は、1970年頃に7%でピークを迎え、その後は徐々に下がっており、現在3パーセント台中盤である。片や廃業率はというと、これが1060年代から変わらず3~4パーセント台をウロウロしている。過去は(経済が成長していたのだから当たり前と言えば当たり前だが)常に開業率が廃業率を上回っていたのだが、ここ最近はどちらも3パーセント台中盤で拮抗している感じだ。

個人店の開廃業率は、非常にショッキングなお話になってしまうのだが、と前置きして、1980年代からずーっと、個人の喫茶店、カフェの廃業率は、開業率を下回って上回っている。いいですか、1980年よりこっち、どの年も、新規にオープンしている数よりも、お店を閉めた数のほうが多いんですよ。これ、とても大事なことなので2回言いました。

2000年頃の数字を抜き出すと、全国に約9万の個人店がある中で、その年に新規オープンしたのは3000店(3.4%)、その年にお店を閉めたのは5500店(6.1%)である。差し引き、2500店も減っているのである。
ちなみに、1980年頃の数字と比べると、開業率で0.6%の減少、廃業率で0.9%の増加となっている。
毎年2500軒も減ってるなんて、にわかには信じられない話である。東京23区の人口は日本の1割いるとして、人口比通りに分布しているとすれば、なんと毎年東京23区内の個人店は250軒ずつ減っていっているのだ。1区につき毎年10軒強が減っているわけ。これはすごいことですよ。毎月1軒、店を閉めているわけです。
周りを見渡すと、新規オープンのお店が目立つ。どこそこで開店したよ、オープンだってさ、なんて話をよく聞く。雑誌を見れば新しくできた店の紹介が毎月ひっきりなし。それだけ開店しているにもかかわらず、全体としては1区に対して10軒減ってるんだって信じられる? 毎月何軒が店を閉めているのだろうか。ああ怖い。

というわけで、存在するお店の数とその増減について実に悲しい現実をふたつの側面から見たわけだが、さらに追い打ちをかけるような話をしなければならない。
実際にお店をやってみたら労働条件はあまりよろしくなかった、という話だ。

個人店で常時働いている人、つまりは事業主かその家族か、あるいは社員ということになるが、彼らの休日は月間何日だろうか。統計では、答えは5日である。年間で言えば60日である。
次に労働時間。同じように個人店で常時働いている人は、一日平均10時間働いている。さきほどの休日の統計とあわせると、月間の労働時間は、250時間である。
ちなみに厚生労働省が出している、毎月勤労統計調査というものを見ると、すべての業種をまとめてみた場合、常時雇用者の月間平均労働時間は170時間である。

やはり、飲食店、しかも個人営業ということになると、労働時間は長くなる傾向にあるようだ。しかも休みが少ない。これだけ働いて、じゃあ収益性はどうなの、という話だ。
もしすごく儲かるんなら多少無理したって構わない、という人もいるだろう。
それでは収益性の話。

いろんな指標があると思うけど、ここでは従業員一人当たりの売上に注目してみる。
個人店の従業員一人あたりの月間売上高の平均は、なんと46万円である。これは何を意味するかというと、一人で営業しているカフェがあれば、平均すれば月間46万円の売上であるということだ。二人でやってる個人店なら、90万円の売上なんだなということ。
この数字をベースにして試算してみると。

モデルとして、常時二人体制、つまりオーナーが一人と、アルバイトを常時一人お店にいるような形で雇って営業している個人店があるとする。よくありがちな零細店だと思う。家賃10万円(このくらいが実感として都市部から郊外まで含めた個人店の家賃の平均じゃなかろうかと思う)、当初の借入金の返済がこれまた10万円、光熱費で5万円、被雇用者に20万円の合計45万円が毎月決まって支払うお金だ。売上が90万円あるとして、原価率30%で仕入に30万円支払うわけで、ここまで合計75万円。大雑把な計算だが、手もとに残るお金が15万円。
事業主は先ほどの統計ではおそらく月間労働時間が250時間なわけだから、時給計算すると600円。なんともトホホな時給である。ちなみにこのモデルケースでは、アルバイトのほうが収入が高い。なんてことだ。

そして市場を見渡すと、これまた厳しい話が待っている。

1080年代から比べると、喫茶店におけるコーヒー飲用杯数は、およそ6割減となっている。週に1杯ほど消費されていたものが、3週に一杯程度まで低下しているのだ。
厚生労働省のアンケートによると、喫茶店の経営上の問題点のうちもっとも多い回答は「客数減」であり、複数回答であるが、全体の8割がそう答えている。
残念ながら、客数減というのは顧客の飲用杯数減とリンクしており、仕方ないと言える。
市場規模は、同じ期間で見ると17億円から11億円とおよそ4割減となっており、消費杯数減ほど低下していないように見える。しかしそこにはカラクリがあり、コーヒーそのものの単価は同じ期間で1.5倍以上になっている。つまり、喫茶そのものの回数は6割減ったものの、一杯当たりの値段が上がっているので、相殺されて市場規模は4割減でおさまっているということだ。
って、4割減でも随分と減ってしまっているわけだけど・・・

といろんな面から、喫茶店、カフェの開業と経営について考えてみたところ、2014年になってもカフェをやるのは依然として大変であることがわかった。

わかったからどうだというの?
やりたけりゃ、やろうぜ! ビバ!開業!

※自己責任でお願いします

参考:厚生労働省、経済産業省の公開資料をいろいろと見ました


Published in ビジネス

8 Comments

  1. ホゼさんこんばんは。
    私の実家が 幼いころからずっと飲食業でしたので、
    中学生ぐらいから両親が帳簿を付けていたのを手伝っていました。
    ですので、しみじみと飲食業の厳しさがわかります。
    先日、税務職員の同級生と話す機会があったのですが、
    「ほんとうに飲食業の人たちは よくやってるなー?」と、
    感心と言うか 半ば呆れたように言っていました。
    営業利益が出ている店は、ほぼ皆無に近いとも言っていました。
    そう言う私も個人事業主ですが、
    経営者の私よりも従業員の方が手取りがいいのです。
    おそらく、そんな中身は
    世間にはよくわかっていないでしょう。
    で、やはり
    税金は高いですね。

    • Shigeru Jose Sugiuchi Shigeru Jose Sugiuchi

      飲食店に限らず、小さな商いをやっている人たちのほとんどは、厳しい中がんばっていると思います。社会全体の仕組みとして、今は小さな商いが難しいように思います。税金しかり、法律や各種規制しかり。
      江戸時代の農民に言われた「生かさず殺さず」というのは、現代では個人事業主のことではないかと思ったり。実際、カフェに限らずいろんな業種で、青色吐息な個人店オーナーさんが周りにたくさんいらっしゃいます。右肩上がりで儲かってしょうがないなんて人は本当にめったに見かけないです。笑いごとじゃないですね。
      個人店が生き残る道、簡単ではないですが、自分を含め、なんとか小さい商いをしている人が生き残ってもらいたいと思いますし、もしそういう道があるのであればあればいいなあと思っています。

      お互い、がんばってまいりましょう!^^

  2. もへぃ もへぃ

    お洒落な空間作って美味しいコーヒーを出しても、喫茶店に来る客の大半は、そこを公衆便所代わりに利用する鼻も舌も馬鹿になっている喫煙者ばかり。かといって、禁煙にすれば客は半減してしまう。

    • Shigeru Jose Sugiuchi Shigeru Jose Sugiuchi

      そうなんですか。個別のカフェ各店などについては今回のポストでは触れていないので、おっしゃられるようなデータでも見つかれば、また記事にするこがあるかもしれません。コメントありがとうございました。

  3. てりー てりー

    >>1980年代からずーっと、個人の喫茶店、カフェの廃業率は、開業率を下回っている

    上回っている、じゃなくて?

    • Shigeru Jose Sugiuchi Shigeru Jose Sugiuchi

      ご指摘ありがとうございました!
      さっそく訂正いたしました!

  4. コーヒースタンド コーヒースタンド

    借入金、最初はいくら借りたのですか?

    • Shigeru Jose Sugiuchi Shigeru Jose Sugiuchi

      借入は、無担保の場合(普通はこれだと思います)、自己資金比率が50%程度と言われてますよね。つまり、自己資金と同額くらいしか借入できないということになります。
      しかしながら、借入するということは返さなければならないということなので、開業するお店の規模感やどのような業態かということを考えて、めいっぱい借りるということではなく、十分に返済が可能であるというような安全な借入計画を立てたほうがいいと思います。
      借入金額の平均などは、各種統計資料を当たってみましたが、わかりませんでした。そういう統計はないのかも知れませんね。

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