はい、時は流れてSCAJ2013inビッグサイトです。
僕はジャッジとして参加しているので、自分で写真を撮ることができなかったので、このブログに貼る写真をウェブから探そうと思って画像検索したら、いやまあびっくりするくらいJHDC(決勝)の写真が無い(笑
意外と観客多いなあと思ってステージ上から見てたんだけど、みんな競技があまりにも面白すぎて写真撮るの忘れちゃったのかな?(おいおい
というわけで、またしても主に文字だけで進行していきますごめんなさい。
さて、大舞台の東京ビッグサイト特設ステージとは言え、前半は予選と同じルール。でもそこは予選とは違う大人数の観客とか手もとをカメラで撮られて大画面モニターに映し出されるとか、ちょっと(かなり?)勝手が違ったかも。
お借りしてきました当日の写真
元の記事は準決勝進出の小田原の移動カフェalfieri-streetさんのブログより
そして決勝となる。
余談だが、僕は決勝ではヘッドジャジを任された。コーヒー業界に身を置くこと4年、このような大役を任されたのは初めての経験で、これは非常に良い経験をさせていただいた。感謝。
さて、決勝である。
決勝では、
・自分で好きなコーヒーを使用できる
・かなり自由な抽出ができる
・プレゼンが必要
といったところが予選と違う。ただ抽出技術を競うだけでなく、そこには「お客様」の存在が見えてくる。実際にはジャッジをお客様に見立ててということになるのだが、ただ美味しく淹れるだけでは勝てないルールになる。
まず、自分で好きなコーヒーを使用できるという件だが、当然、美味しいコーヒーを持ってくるわけである。スペシャルティコーヒー協会が主催しているわけで、そのコーヒーはSCAJ方式(COE方式)で高得点であることが望ましいというか結果的にそういうコーヒーのほうが得点しやすい可能性がある、のではなかろうかと思う。
ただ、それはその豆のカッピングスコアが高いほど、JHDCでの得点が高くなる、というような簡単なことではない。というか、その豆が美味しかったかどうかという項目はそれほどウェイトがあるわけじゃない。カッピングスコアが高いに越したことはないが、ペーパードリップにマッチした風味特性かどうかというほうが重要なんじゃなかろうかと思う。
もちろん、そのコーヒーのポテンシャルを引き出すことが必要であるのだが、それ以上にカップになったその液体にするために、自分はなぜそのコーヒーを選んだのか、どういう意図で、どういう目的があって、というのが大事である。
次に抽出の自由度である。スポンサーが用意した器具を使用しなければならないのは同じだが、予選ほどガチガチの抽出ルールではない。わりと自由に抽出してOK。
持ってきたコーヒーをどうやったら一番美味しく淹れられるか、そこが腕の見せ所。長年の経験やカン、独自の理論、はたまた臨機応変に抽出状況を見ながら、とにかく皆さんそれぞれ工夫して抽出していた。
これもまた、なぜそういう抽出をしているのか、などということが非常に重要になってくる。美味しいことはもちろん求められているのだが、どうやって美味しさを引き出しているのか、抽出の技術がどれほど関与しているのかというのが重要。
そしてプレゼン。準決勝までは技術を競ってきた皆さんが突然エンターテイナーに生まれ変わる瞬間である。立て板に水のごとくなめらかなプレゼンあり、たどたどしくも心に響くプレゼンあり、情報を事細かに伝える人や自身の思いのたけをぶつけてくる人、いろいろあったが、これ、プレゼンの重要なところは、
×ジャッジ「感動した!」
○ジャッジ「なるほど!」
なのである。
どういうことかと言うと、わかりやすいとか伝わるとかそういうこと以前の問題で「こうしたかったので、こういうふうにやってみた。だからこうなった」をちゃんと言うことが大事なのである。言い換えれば、目的と手段と結果がリンクしていなければならないのだ。
×競技者「バランスを良くするために、メッシュをできるだけ細かくしました」ジャッジ「関係性がよくわかりません」
×競技者「美味しいコーヒーを抽出したいので、高地産の豆を使うことにしました」ジャッジ「低地産でも美味しいコーヒーはあると思います」
×競技者「愛情がコーヒーを美味しくします。私は抽出は愛だと思います」ジャッジ「いい心がけですが、カップに反映されてません」
○(例)競技者「後味のクリーンさを求めて、粗めに挽き抽出を早めます。しかしスカスカの風味では困るので標準的な粉量よりも30%多くしていますので、濃度も十分に出ます」ジャッジ「なるほど、粗めで早い抽出ですがきちんと濃度を保ってますね」
・・・ただし、最後のマルの例でもジャッジが「え?濃度出てないよ」「見たところ3分以上かかってるからそんなに早い抽出じゃないんじゃない?」などと、結果として言ってることとやってることや結果が違っていると、ダメなのよ。目的と手段と結果のリンク、これ大事です。
で、その「目的と手段と結果がリンクしている」上で、笑いあり涙ありの感動的なプレゼンをしていただくと、非常に高得点になります。
プレゼンのところが長くなったけど、やっぱりプレゼンが決勝の競技の醍醐味でもあるので、ここをキッチリとやれてるかどうかというのが得点に大きく影響するし、またたくさんの観客の皆さんが見てても面白いところなので、おろそかにできない部分だと思う。というわけで、説明が長々続いてしまってすんませんが、来年の大会に出る人は、決勝ですごいプレゼンをぶちかましていただけますと、競技としても面白いし、観客も楽しめるし、いいと思います。
んで、決勝は、やっぱりというかなんというか、このカップは美味しかったということとこの人のコーヒーを飲みたいということが、高い次元でバランスしている人が上位になったと思う。
抽出をする技術が高く、それをサーブするサービス能力も高い、というような人だ。
これってお店に立ってるときにも同じことが言えるんだと思う。抽出の技術とサービス係としての能力がどちらも高いという人が、そりゃ好ましいわけだよね。
ハンドドリップチャンピオンシップの決勝で上位に行くような人は、きっとお店でもしっかりとした接客ができてて、お客様に美味しいコーヒーを楽しんでもらっている人なんだろうなあと思う。
そういうところをちゃんとジャッジは見てるんです。そしてそういう人が優勝、あるいは上位入賞を果たしたんだと確信しています。
というわけで、ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ、今年涙を飲んだ出場者も、観客席で見てた人も、このブログを見て初めて大会の存在を知った人も、それ以外でもコーヒーを自分で淹れる人はみんな、来年出場したらいいと思うよ。すごく出場の敷居が低い大会なんで(なにしろペーパードリップなら大抵の人が経験あると思う)、誰でも気軽に出場できるし、出場するとなったら準備でいろいろ試してみたりして経験が豊富になるし、そして大会ではいろんな人の考え方、抽出方法などがすごく勉強になるよ。
で、僕も去年今年とジャッジを務めさせていただいて、非常に良い経験になったし、すごく勉強になったんで、来年も大会に関わっていきたいと思います。というわけで出場(予定)の皆さん、次の大会もよろしくお願いしますね。
2013JHDC顛末記(2)ビッグサイト編
Published in 雑記