マイクロデファクトスタンダード

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デファクトスタンダードって

デファクトスタンダードという言葉がある。

ISO、DIN、JISなどの標準化機関等が定めた規格ではなく、市場における競争や広く採用された「結果として事実上標準化した基準」を指す。デファクトスタンダードに対して、国際標準化機関等により定められた標準をデジュリ(デジューレ、デジュール、デジュア)スタンダード (英語: de jure standard) と呼ぶ。
インターネットの通信規格であるTCP/IPや、接続規格の多いコンピュータ関連分野で使われ始めた言葉だが、現在ではこれらの分野に限らず各種商品やサービスに広く使われるようになった。
電気製品など、商品開発サイクルの短い分野では、決定まで何年もかかる標準よりも、その時点での市場で一般的な規格である、デファクトスタンダードの重みが大きい。また、このようなデファクトスタンダードが後の国際規格の土台となる場合もある。
当然ながら、デファクトスタンダードは市場の状況により変化するため、これを獲得した企業は大きな利益を手にすることができる。そのためデファクトスタンダードの積極的な採用がかえって市場の独占を推し進め、結果として製品の価格を引き上げてしまったり、競争の鈍化を招く恐れがある。一部企業によるデファクトスタンダードは、ベンダロックインにつながることもある。(Wikipedia)

コーヒー業界でも、アレはデファクトスタンダードだよね、みたいなのがいっぱいある。
例えば、エスプレッソマシンのE61グループヘッドというのは、どこのメーカーも使ってるけど国際的に標準化された規格ではない。もともとFAEMAというメーカーが作ったマシンに搭載されたものなのだが、使い勝手が良かったのか、今ではたくさんのメーカーが採用している方式となっている。
スターバックスの大ヒットドリンク、フラペチーノ。これももはやデファクトスタンダードと言って良いと思う。ほかのコーヒーチェーンなどが販売している似たようなのを「フラペチーノみたいなヤツ」って言ってたいていの場合通じるんだからすごいものだ。

これからコーヒービジネスに参入したいという人、あるいはもうコーヒービジネスで活躍をしている人、いろんなアイデアを持っていると思うのだが、そのアイデアから生み出されるプロダクトやサービスをデファクトスタンダードにしたら、きっと素晴らしい結果になるに違いない。

そうなるのは大変、その座に居続けるのはもっと大変

そうは言っても、デファクトスタンダードになるのは大変である。なにしろ、市場で淘汰された後、消費者に支持されて残っていなければならないのである。これだけたくさんの企業がありたくさんの人が働くコーヒー業界の中で、そんな素晴らしい優れたオリジナルのアイデアを考え付くほうが難しい。というかたぶん無理。(もしこれを読んでるあなたがそういうアイデアを思いついたりしたら僕にそっとコメント欄で教えて下さい。一緒にビジネスとして展開していきましょうグヘヘ)

もし、何か素晴らしいアイデアを思いついて売り出したところそれが運よくデファクトスタンダードになった、という幸運を手にしても、その後ずーっとデファクトスタンダードであり続けるのはさらに難しい。例えば、盛大にVHS対ベータ戦争などとやらかしてVHS陣営が手にしたはずの栄光は、DVDが出てあっさりと過去のものになってしまった。この手の例は歴史上いくらでも出てくるわけで、市場の変化のスピードはとても速く、それについていけないものはやっぱり消え去ってしまうわけである。

マイクロデファクトスタンダードという考え方

なかなかデファクトスタンダードが難しいというのはわかった、でも難しいけどどうにか実現できないだろうか、ということで「マイクロデファクトスタンダード」の出番である。
はて、マイクロデファクトスタンダードとはなんだろうか。

その業界で誰でも知ってる、消費者は誰でも使ってる、そんなデファクトスタンダードなものがあればその企業は(当面は)安泰だろう。しかし、もっと小さい規模のデファクトスタンダードということであれば、もっと容易にその位置に立つことができるのではないか、そしてその効果は小さいながらも利益をもたらしてくれるだろうという話である。それをマイクロデファクトスタンダードと呼ぶ。
世界を変えるほどのアイデアや、世界中の誰もが使うようなものを作らずとも、もっと小さい規模であれば、その中では最も支持率の高い商品やサービスにするというのはそこまで難しくはないはずだ。

コーヒービジネスのマイクロデファクトスタンダードの例

とある駅の周辺にはカフェがいくつもあり、それぞれに個性があり、それぞれに固定客がついているとする。つまり棲み分けがうまく機能しているわけだ。しかしそのうち一軒だけ、やたらにラテアートをがんばっているカフェがあったらどうなるか。
仮にA店とするが、そこの店では単にラテアートが好きだからとか、かっこいいラテアートを描きたいとかそんな理由で、好きこそものの上手なれではないがやりたいことを突きつめていったらやたらに上手になってしまっていた、となると、そのエリアのカフェ文化に対してどういう影響があるだろうか。
そこのラテアートが群を抜いて素晴らしく評判となっている、となると、同じエリアのほかのカフェのうちいくつかはそれに追随するかも知れない。少なくとも、刺激になり、ラテアートの技術向上に努めるだろう。そうすると、だんだんとそのエリアのカフェ文化は充実していくことになる。エスプレッソマシンがある店ではラテアートが上手になり、無い店ではそれ以外のところでがんばろうとするわけで、個々のカフェの魅力が上がっていく。
そうなった時に、あのエリアのカフェ文化を牽引しているのはどこだと言えば、A店であるということになる。A店がひとつの基準に成り得てしまうのだ。そのエリアで、デファクトスタンダードになったということである。

同じようなことが、小さい括りの中ではたくさん存在している。それは小さい地域というような、面積的な話だけではない。例えばyoutubeで、twitterで、というようなネット界隈での有名店になるとか、例えば、独特なドリップ方式でペーパードリップ界での有名店になるとか、地域性には関係ないけど、あるひとつのキーワードで括れるようなグループの中でデファクトスタンダード化していくということも、ひとつのマイクロデファクトスタンダードという形である。

マイクロデファクトスタンダードを持つ強み

その小さいグループの中ではオリジナルかオリジナルに非常に近い位置に居られるということは、非常に強力なメリットだ。
誰でも何に限らずオリジナルというものには一定のイメージがある。先行者、先駆者というような、あるいはリスペクトというようなものもあるかも知れない。産業としてこれだけ規模の大きいコーヒービジネスの中で、どこにそういう隙間があるのかと思うだろうが、小さいグループであれば可能だ。あるキーワードで括った小さなグループの中であれば、たとえほかのグループではすでに確立されたデファクトスタンダードがあったとしても、こちらのグループの中でそれが確立されてなければ話は別だ。そういう存在がまだいなければ、がんばれば自分がデファクトスタンダードになれる可能性が高い。そしてそれは、そのグループの中での優位性を保証してくれるものひとつとなる。

どうやってマイクロデファクトスタンダードになるか

大事なのは、そのプロダクトやサービスの利用者に支持されることであるからして(でないとそもそもデファクトスタンダードになるかどうかのテーブルに乗らない)、やはりそれは優れたプロダクトやサービスであるべきだ。しかし、それが完全にオリジナルでないとダメかというと、あるグループの中でまだデファクトスタンダード化されていないものであればいいと思う。これがマイクロデファクトスタンダードのいいところである。まったくのブランニューなオリジナルのアイデアなんて、そうそう浮かばないからね。
そういうアイデアがあれば、あとは簡単。それをずーっと愚直にやり続けるだけである。
やり続けるとあら不思議、いつかそれに関してはあなたが一定のグループの中でデファクトスタンダードになってしまうのだ。もちろんコーヒー業界全体ではそうではないけれども、そのグループの中ではあなたが第一人者であり、基準となる。先ほどの例で言えば、ラテアートの上手な人は世界中にたくさんいるけど、その駅の周辺ではA店が第一人者であり基準となる、というわけだ。

まとめ

何かいいアイデアがあればそれを自分の周りの小さなグループの中で実行してみよう。世界のどこかに先行者がいてもいいし、それについて現状では未熟であってもいい。いいアイデアをひたすら実行し続けると、いつしか自分の実力も上がり、自分の周りの中で言えば、第一人者や基準となることができる。それがあなたのビジネスにとってプラスの影響を与えることは間違いない。
大事なのは、それが優れいているアイデアであると同時に、消費者に受け入れられ、将来的に支持を得ることができるものであること。そしてそういうものであればあなたが一生懸命に打ち込むに値すると言えるだろう。

おまけ

マイクロデファクトスタンダードという言葉は、僕が考えた造語です。ぐぐっても出てこないですよ。念のため。

おまけ2

A店には特定のモデルはありませんよ。念のため。


2 thoughts on “マイクロデファクトスタンダード

  1. >それについて現状では未熟であっていい

    なんだか救われると同時に、このまま続けてもいいんだなって背中を押してもらったような気がします。

    ぼくはフィリピン在住者で、こっちで現地の豆を使った焙煎屋さんを始めたいと日々活動しています。

    いつもコーヒーだけでない雑学的な内容もふんだんなエントリーを楽しく読ませていただいてます。
    これからも頑張ってください。

    • Shigeru Jose Sugiuchi

      マイケル様
      いつも読んでいただいてありがとうございます。
      僕がやってるお店は、普通の街の自家焙煎店で、誰でも知ってるとか、遠くからわざわざお客さんが来るとか、お客さんが列になるとか、そういうんではないんです。
      でも、僕のお店に来るお客さんは僕のお店を愛していてくれて、それは彼らにとって「自分のコーヒー屋」って感じなんだと思います。そこに小さいビジネスがチェーン店に立ち向かえる理由があると思います。
      自分のビジネスに対して好意を持ってくれているお客様の輪を、すこしずつ広げていければいいのかなと思っています。

      フィリピンでコーヒー屋さん、素敵です。フィリピンはまだ行ったことないですが、世界中で美味しいコーヒーが飲める居心地いいカフェが増えるのはとてもいいことだと思います。ぜひ頑張ってください!
      (すごく楽しみにしてますので、オープンしたらぜひご連絡ください!何ができるわけじゃないけど、日本で宣伝させてもらいます!)

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