生存率のウソ?ホント?

よく開業指南本や開業支援サイト、コンサルな会社のページなどで見る「開業率、廃業率、ウン年生存率」という言葉が、どの程度信憑性があるのか、調べてみた。

開業率、廃業率とは

開業率の計算方法だが、年間の開業率を計算するには以下のような式で求める。

 開業率とは、有る特定の期間において、「〔1〕新規に開設された事業所(または企業)を年平均にならした数」の「〔2〕期首において既に存在していた事業所(または企業)」に対する割合であり、〔1〕/〔2〕で求める。廃業率も同様である。(※『総務省「事業所・企業統計調査」に基づく開業率・廃業率の計算方法』による)

日本の飲食店の開業率、廃業率

少し古いけど、2004年から2006年までの開業率と廃業率のデータ。飲食だけで括られてなくて、飲食・宿泊となっている。
開業・廃業の業種別構成(非一次産業・民営事業所・2004年~2006年)
kf301070

このデータを見ると、開業率と廃業率は「飲食・宿泊業」で1.5%。どういうことかと言うと、全体の数から毎年1.5%、事業所数が減っているということである。

この数字が多いか少ないかという話は置いといて、このデータから読み取れることは何だろうか。

1)2004-06年の間に新規に開業した事業所は17.4%である
2)2004-06年の間に廃業した事業所は18.9%である
3)開業した事業所が2006年末時点ですべて営業中かどうかは不明
4)廃業した事業所がどのくらいの期間営業をしていたかは不明
5)開業した事業所のうち、2004-06年の間に廃業した事業所があるかどうかは不明

開業率、廃業率のデータだけからは、意外と読み取れることが少ない。

生存率

企業の生存率というのは、次のような定義である。

起業したあと、一定の期間後に撤退した企業を除いた数で初期値を割ったもの(中小企業白書2011より

中小企業白書生存率

ちなみにこのグラフ、全業種であること、帝国データバンクが作成したデータであること、そしてデータの注意書きに書いてある「実際の生存率より高めになっている可能性がある」ということから、ちょっと補正して考える必要がありそうである・・・

ではグラフをよく見てみよう。
このグラフを見ると、意外と廃業してないもんだなと思う。
まず第一に、1年経過後に生存している企業の数値はほぼ間違いなく全企業の数値であろうが、29年経過の数値はどうかというと、28年生存していた企業が29年目に生存していたという数値である。ここでグラフの数字が少し上昇しているのだが、最後の1年で創業した企業はデータ上撤退しないわけで、その企業の数が乗っているのだと思われる。分母(期間内に創業した企業の数)は決まっているので、生存率が上がるということは原理的に無いわけで、そういうことであろう。
そして帝国データバンクに載っている、ということである。当然、個人事業は載ってないよね。
さらにさらにグラフそのものに「実際のデータより高めに出てるかも」と注意書きがあること。

それを踏まえても、帝国データバンクに載る全業種の平均を取ってみればこのくらいは生き残るものなのだ。

でもこれ、あくまでも企業の話なのよねえ・・・

飲食店の企業/個人事業比

というわけで、飲食店は企業と個人事業がどのくらいの比率で混在しているのかという話である。
外食産業の現状 – 農林水産省によると、個人事業の事業所数の割合は6割を超える。チェーン店は通常は複数店舗あるのでチェーン店なわけで、個人店が複数店舗あるのは逆に稀だろうから、事業所数で6割超ということは経営母体数で言えば7割とかになるのかね。
いまどき街で見る飲食店はチェーン店ばかりだなあと思っていたけど、いまだに6割以上は個人店なのね。個人店のほうが、数の上では優勢なわけだ。
そこで、街で見かけるお店の生存率ということになると。企業と個人事業でどのくらい違うのかが気になる。

企業と個人事業の生存率の差

事業の存続・倒産と再生 – 中小企業庁によると、企業の5年生存率は52%。個人事業の5年生存率はそのおよそ半分ほどの25%となる。
えらく違うなあという印象である。
ちなみに、全業種の統計である。飲食店の場合は、どうなるのか。わかりません。

独断と偏見に満ちたまとめ

インターネッツをサーフィンしていると、よく飲食店の開廃業などの話が個人ブログや飲食コンサルのサイトに出てくるが、飲食店の生存率という話をした場合、通常、個人店の話であってマクドナルドやゼンショーの話ではないだろう。
飲食店の開業率、廃業率(事業所ベース)という話をした場合、通常、個人店の開店や閉店の話であって、スターバックスの新店舗についてではないはずだ。
ということは、ここで考察すべきは次のような店になるはずである。

(スタート時に)
・経営母体は、個人か、法人であっても家族経営かせめて同族経営である
・資金調達は個人の資産と個人の借り入れで賄う
・従業員はアルバイトやパートを主とし、正社員がいても数人がせいぜい
・店舗数は1店舗のみを基本とし、支店(の計画)があっても2~3店舗まで

という感じだろうか。まあ中らずと雖も遠からずといったところだろう。

そこで、こういうお店がどのくらい生存しているかという感覚的なところであるが、データとして挙げたうち、帝国データバンクに登録される企業の5年生存率が8割というのは、まあ、そういう企業だからねえ、という気がする。当然、個人事業とは乖離があるだろう。
どっちかというと、中小企業庁のデータ中の、個人事業の5年生存率は25%、こっちのほうが体感に近い気がする。ところでこの個人事業というのは、おそらく国税庁からのデータであろうと思うが、個人事業というのは副業でやっている場合もあるし、無店舗でやっているものも(特に近年では)それなりに多いだろう。つまり、飲食店という実店舗が必要なものというのは、開業、即撤退、とはしにくいものなので、この25%という数字よりは上方に考えたほうが良かろうと思うのだ。
しかし同じデータ中の法人の5年生存率50%というところには及ばないはずなので、その中間のどこかということになろうかと思う。

というわけでかなり強引に数字にしてみると、

個人の飲食店は5年以内に半分以上が撤退するが、5年生存率ということでは30~40%程度はあるんじゃなかろうか

というあたりでどうだろうか。
公的な機関が出した数字だけを使用しているので、そう悪くない推測だと思う。

参考にしました

企業生存率のウソ? – リッチ・シェフレン
オプトCEO鉢嶺登のブログ 「企業生存率は20年で5割」
企業の生存率に関する国税庁の2005年の調査というのはどこにあるのか。 

おまけ

個人事業というのは本当に実態がつかみにくい。調べていて、いかに個人事業に対する公的な監視がゆるいものかと分かった。そして個人事業の圧倒的な数の力。日本の会社の99%は中小企業と言うが、日本の商売をしている事業所の経営母体のうち半分が個人事業。大企業なんて圧倒的な少数派なんだなあ。

おまけ2

いろいろデータを当たってみたが(インターネッツに接続できればかなりいろんなデータが見れるものだ。便利至極)、どのデータも帯に短しといった具合でなかなか核心を突けなくて結局尻切れトンボのような記事になってしまい、ここまでガマンして読んでいただいた方に感謝。


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