人はなぜカフェに来るのか

一日、カフェの席に座っていたら、いろんな人がカフェに来ることにびっくりするだろう。いやしないか。

カフェにはいろんな人が来る。
ではカフェに来る人は、なぜ来るんだろうかという話である。その答えを探ってみよう。

と問いを書いておいていきなり答えであるが、100人いれば100通りの理由がある、というところではなかろうか。

答えになってない!と怒るなかれ。カフェに来る人にはそれぞれ理由があるのは間違いない。というのも当たり前の話で、なんの理由もなく来るってことはまず考えられないわけで、まあそれぞれに理由があって来るのだろう。

え?その理由が知りたいんですか? それはカフェにいる人に聞いてくださいよ。100人に聞けばきっと100通りの答えをもらえると思いますよ~。

というアホな話は置いといて、マーケティング発想法という本があってだな

昔に買った本で「マーケティング発想法」というのが面白くて、けっこう古い本なんだけど、読んだ当時もぜんぜん色あせてない名著だなあと思った次第であるが、その中のエピソードである。
(手元に本が無いので、ググったりしての、ややうろ覚えの書き起こし)

とある小売店で4分の1インチのドリルがたくさん売れたのを見た著者は「顧客が買ったのはドリルだが顧客が欲しかったのは4分の1インチの穴である」と考えた。

真理である。

この考え方は、消費行動のいたるところで類型を見ることができる。すなわち。

問:電気屋で炊飯器を買った客が欲しいものは?
答:炊きたてのごはん

問:IKEAの家具を一部屋分買った客が欲しいものは?
答:北欧テイストの部屋で暮らす生活

問:スキー板を買った客が欲しかったものは?
答:白銀の世界をスイスイっととすべる爽快感

エトセトラエトセトラである。
つい先日のバレンタインデーにチョコを買った客(世のたくさんの女性である)が欲しかったものは何だろうか。まさかチョコそのものではあるまい。
そして、カフェでも同じことが言えるのである。

先日のインタビューでインタビュアーが困ってしまった話

とあるインタビューを受けたときのことである。
ちょっと僕の話す内容がインタビュアーさんに伝わりにくくて、困らせてしまった。

インタビューは、お決まりの「なんでコーヒー屋を始めたんですか?」みたいなところから始まって、いろんな話になりながら「なるほどー」みたいな反応で進んでいたのだが、途中、どうもわかりにくいというか伝わりにくいことがあって、少し足踏みしてしまった。
それは「ウチに『コーヒーを飲みに』来るお客さんはほとんどいませんよ。時どき、そういう人もいますがね、珍しいことです」という話になったときのことであった。

SSEに来るお客さんはコーヒーを飲みに来るのか。豆を買いに来るのか。
ある意味、そうだとも言えるし、そうでないとも言える。
インタビュアーさんが(お世辞かも知れないが)インタビュー中にコーヒーを飲んで「ここのコーヒーは美味しい、お客さんはこのコーヒーに魅力を感じて吸い寄せられるようにやってくる」みたいなことをおっしゃったので、僕が「いやいやカフェ利用のお客さんが『コーヒーを飲みに来た』のかというと、ほとんどのお客さんは、コーヒーを飲みに来たわけじゃないですよ」と答えたところから、なかなか理解してもらえなくて困ったのである。

SSEはお客様に何を売っているのか

あるいは、SSEに来るお客さんが本当に欲しがっているものは何なのか。

常連さんの、向かいのビルで働く女性の場合である。
その人は、夕方によくコーヒーを買いに来る。残業の具合によっては、甘いものを一緒に買っていくこともある。仕事が終わらないときに、夕方まで根を詰めて仕事をしているとそろそろ効率が落ちてくるのだろうか、息抜きがてらコーヒーを買いに来て、テイクアウトしていくのである。そして「煮詰まった気分を切りかえることができるのと、コーヒー買ったんだからもうちょっと頑張らなくちゃと思うから」と言う。
彼女にとってSSEのコーヒーは、仕事を捗らせるためのもの、なのだ。

毎日来るたくさんのお客さんにも、同じようなことが当てはまる。お客さんが来店して、本当に欲しいものはなんだろうか。ほとんどの場合、きっと、コーヒーでは無いに違いない。
ロングブラックが350円、お客さんはそのロングブラックを飲んで(あるいはテイクアウトして)、自分のために一杯ずつ手で淹れてくれたほんのちょっと特別なコーヒーを目の前に座ってたり手に持ってたりってことが「今」のしあわせをブーストするから、SSEが成り立つのである。

コーヒー豆を買いに来るお客さんもそうだ。
家で、あるいはオフィスでコーヒーを淹れて飲むためにコーヒー豆を買っていくわけだが、極端に言えばこれ、インスタントコーヒーでもいいわけで、わざわざSSEに来てコーヒー豆を買っていくというのはどういう理由だろうか、と考えると、これは「近所にあるうち、一番上等なコーヒーを、少し手間をかけて淹れて飲むことで生活が(あるいは仕事場が)豊かになる」というようなことなんじゃないかと思うのである。

SSEが提供しなければならないものは、お客さんがしあわせを感じたり豊かになったりする「気持ち」の部分であり、そのためのツールとしてコーヒーを商っているのである。

お客さんが欲するものが多様なので、いろんなお店が存在できる

SSEにときどき「コーヒーを飲みに」お客さんが来る。大変申し訳ないのだが、SSEにコーヒーを飲みに来られてもちょっと困る、と思ってしまう。困るというか、コーヒーを飲みたいのであれば、ほかにもっと満足できるお店があるから、そういうところを紹介したくなってしまう。
希少で高品質なコーヒーを扱い、タネからカップまでの道のりを事細かに説明して、最高のバリスタが先進的な機器と最新の技術で、とにかく品質を求めてカップにする、そういうコーヒーを提供している店がある。きっとそういう店に行ったほうが、コーヒーそのものを美味しく、そして純粋にコーヒーを楽しむことができる。

カフェ利用したいがとにかく安くあげたいというお客様もある。そういう方はなかなかSSEにはなじまなくて「うわっ、高いなここ」と不本意ながらコーヒー代を払うハメになる。もっと安い店もあるのだから、やはりそちらを紹介してしまいたくなる。
企業努力で、あるいは徹底的な合理化で、もしかしたら大変に薄利であることをベースに、良いものを驚くほど安く提供している店がある。そういう店に行けばコストパフォーマンス的に大満足できるはずだ。

とても美味しいカフェメシやずらりと並ぶパティシエ特製のケーキ、ランチセットやモーニングサービス、カフェにはご飯を食べに、あるいはスイーツを求めていらしていただくお客様には大変申し訳なく思う。そういうものがSSEにはちょっと足りないからだ。
料理を専門に勉強したり、パティシエの修行をしたり、あるいはフードに力をぐっと入れてるカフェというのがたくさんある。そういう店は本当に美味しい食事やおやつを堪能できて素晴らしい。

いろんなお店が存在するのは、お客さんの消費行動の目的、あるいは「本当は何を欲しがっているのか」がいろいろだからであって、ドリルの例であれば4分の1インチの穴を欲しがっている人以外にも3分の1インチの穴を欲しがる人も3センチ四方の四角い穴を求める人もいるだろう。あるいは壁紙を貼る前のすべすべした表面というようなものを欲しがる人もいるかもかもしれない(そういう人は電動のヤスリを買うのだろう)。
同じコーヒー店(カフェ)といっても、どういうお客さんが来店するのかによってその形態が違ってくる。どういうものを欲しがってるお客さんかってことね。

まとめ

SSEでカフェ利用に来るお客さんは、ほとんどの場合、コーヒーを飲みに来てるわけじゃない。
・座りに
・朝のルーティーンだから
・子供が寄ろう寄ろうというので仕方なく
・気分転換
・ホテルから一番近いカフェだから(ホテルにカフェが無い)
・自分へのご褒美
・商談、打ち合わせ
・しゃべりに
・このへんにカフェが無いから潰れられたら困るんで定期的にお金を落とす
・ワンちゃんの散歩コースでこのあたりでちょっと一休み
というような理由で来ているのだ。コーヒー関係ないじゃん。

じゃあブルーボトルに行くお客さんが本当に欲しいものは何なのか。
じゃあスターバックスに行くお客さんが本当の欲しいものは、セブンカフェに行くお客さんは、フグレンに行くお客さんは、丸山珈琲は、ランブルはコメダはバッハはイノダは・・・
そのお店に足を運ぶお客さんが欲しいものはなんだろうかと考えると、コーヒーそのものが大変に売りになっているお店からまったくコーヒーでないものが売りになっているお店までいろいろあるんだなーとわかる。
(それぞれ「何」なのかは各自考えてみてください)

おまけ

某地方の有名店、それもバリバリのスペシャルティコーヒーだけを扱うお店のオーナーが言ってたことが本当にソレだと思う。
その店では、銘柄に説明が無い。ケニアとかブラジルとしか書いてない。そしてブレンドが多い。それも「すっきりブレンド」とか「しっかりブレンド」みたいなネーミングばかりである(実際の商品名とは異なります)。
そのオーナーいわく、
「うちに来るお客さん、コーヒーに興味ないもん。美味しく飲めればいいって感じ。ブラジルのどこで取れたとか気にしてないし、そもそもブラジルってことすらわかってないかも。何回か来ると『いつもの』って言うし。そんでブレンドが良く売れるの。っていうかたいてい『ブレンド』って言うから、ブレンド出すと『こないだよりしっかりしたブレンド無いの?』とか言われてだんだんブレンドの種類が増えちゃった」
ブラボーである。
なかなかできないよ、産地に行って買い付けして(もちろんダイレクトトレードだ)、そういう情報は一切出さずにただ「ブラジル」だけで売るってすごい。風味特性すら「コクがあります」くらいの控えめな表現、もちろんトップカッパーであるにも関わらずである。
それもこれも、お客様がそういうの求めてないから、ということでそうしているという。
もちろんお店は大繁盛です。その地方では有名店であり名店であります。さすがの一言に尽きる。

おまけ2

同じような理由で、なぜ人はこのブログを読むのか、ということも考えてみた。
考えてみたけど、なかなか「これだ」というものにたどり着かなかった。
さて、なぜあなたはこのブログを読んでくださっているのだろうか。

問:このブログを読んでいる人が本当に欲しいものは?
答:このブログのコメント欄か、ツイートするときのコメント、FBシェアするときのコメントなどで書いてみて下さい


6 thoughts on “人はなぜカフェに来るのか

  1. ホゼさんの記事だからつまらない事はないだろうと思い読んでます(ハードル上げるw)。
    ブログをやられてる店主さんはたくさんいるのですが、
    多くの方が、『本日はありがとうございました。明日は雨が降りそうですね。』
    みたいな事しか書いてなく。
    それで以前は色んなお店のブログを読んでたのが、
    継続して読んでるのはホゼさんやフヅクエさんなど、
    ルーティンワークではない記事を書いてる方のだけになりました。

    • Shigeru Jose Sugiuchi

      ひでさん、コメントが承認制でした・・・

      ときどき面白い記事書いたぞ!と思うこともあるんですが、たいていは「これは読んでくれる人がいるのかしらん?」と思いながら書いてますw
      たしかに、お店やってる人のブログで宣伝臭くなったり、時候の挨拶ばかりでは、読まなくなってしまいますね。僕も読者の立場ではそうなので、なるべく読もうかなと思われるようなテーマで書いてます。
      ばかばかしいような話も多いですが、これからもよろしくお願いしますね^^

  2. 昨日「ドリップ 世界チャンピオン 日本人」と検索していたら
    以前のブログ2012年7月23日
    【ペーパードリップの大いなる誤解】
    に目がいき、いくつかの記事を読んでいるうちにこちらに辿り着きました。

    ハンドドリップで美味しく淹れる方法を探していておもしろい記事が多く人として興味を持ちました。

    こちらのブログに求めていたのは最初はコーヒーについてでしたが、今はそれも含めた好奇心的欲求を満たすため でしょうか。

    これから楽しみに読ませて頂きます。

    • Shigeru Jose Sugiuchi

      めぐみ様

      コメントありがとうございます。
      最近はとんと更新が滞っておりますが、のんびりと書いていこうと思っています。
      またよろしければ覗きに来てくださいませ。

  3. 現在大阪でバリスタをやっておりまして、いずれ自分のお店を!って思いながらいろんな情報を探してたところ2年ほど前にこちらのブログを見つけ、拝見させていただいております。

    本当にほしいもの。。。言われたら難しいですね
    飲食の考え方や開業の仕方など色々情報を頂いているのですが、それよりも更に奥深くにある本質的なものに惹かれてついつい読む感じです。

    うまく説明できませんが、人と人が関わり合って生きていくこの世の中で本当に求められているものは何なのか的な。。。。ホゼさんが伝えたいこととずれてしまってるかもしれませんが、何故か引き込まれるものがあります。

    今後の記事も楽しみにしております。

  4. こんにちは。いろんなお客様がいるな〜と、日々の業務で思い、「いろんなお客様」で検索したらこのブログに行き着きました。
    そうですよね、私もコーヒー飲みますが、仕事のON/OFFのスイッチ切り替えのために、喫茶店に行きます。
    コーヒーそのものを飲みたいなら、豆買って家で飲めばいいですものね。
    空間と時間にお金を払っている…といえばわかりやすいかも知れません。

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