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ラテの適正温度とは

今日、いつもお世話になっているカフェでコーヒーを飲んでいたら、出かけていたマスターがえらくニコニコして店に戻ってきた。
ご近所さんから面白いものを借りてきたとのことで手にはコレを持っていた。
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そう、放射温度計である。対象物に触れずに温度が測れるすぐれものである。
たぶん、借りてきた先でも業務で使っているわけで、すぐ返さなきゃならないらしく、「じゃあ急いでラテの温度を測ろうよ!」と言うことになり、急遽ラテの温度測定大会となった。
まず、抽出しているエスプレッソの温度を測定してみた。
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意外と低いぞ、70℃から73℃あたりのようである。カップはちゃんとあったまっているし、湯温も少なくとも90度程度で安定しているはず。ポルタフィルタだってグループに付けていたから冷たいわけないし。20度も違うってどういうこと?
と思っているうちにバリスタがミルクをスチームしているので、続けてラテの温度測定。
温度を計ったら、なんとなんとの45℃くらい。低すぎる!
ちなみにラテを普通に作って、普通に上から放射温度計で測った。
「なんかちょっと低いよね?」
「ぬるい?ぬるい?」
「これはぬるいかも」
というわけでもう一度、もう少し熱めでスチームしてみようということになった。
しかし、今度はちょっと測定方法を変えてみた。
さっきは上から温度を測ってみたら思ったより温度が低く、しかしながら表面の温度より下のミルクの温度が高いのは飲めばわかる。つまり、表面温度は刻々と下がってしまうのだが中の液体はそれほど温度が低下していないハズだ、という仮説に基づき、今度は、放射温度計で上から、棒状温度計で中の温度をはかりつつ、液体をかき混ぜて表面の温度と中の温度も均一にしようというわけ。
一人が放射温度計を持ち、一人が棒状温度計を持ち、一人がスプーンで液をかき混ぜるという三人がかりの測定である。
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注いでいるときのピッチャーの中身(スチームしたて、だ)を放射温度計で計るとぎりぎり50度に届かない。注いでいる途中のラテの表面も同じ程度。そして注ぎ終わったラテの表面は45℃くらいからどんどん下がっていく。2~3秒で1℃くらい下がる下がる。
そこでかき混ぜて中と表面の温度を均一にすると上がる上がる、温度は52℃くらい、ぬるいかといえば若干ぬるいかも知れないが、味は良い。スターバックスなどと比べると格段にぬるいのだが。うーんうーん。これはぬるいのかぬるくないのか。味基準ではぬるくない(適正)だというジャッジなのだが。
これがどのくらいの温度かというと、ずずー、ゴクリという感じだ。フーフーしないで飲める温度。そしてミルクの甘みは十分に引き出されていると言ってよい。
しかしうまかったからこれでOK、では終われない。ミルクの適正温度って65度とか言うよねー、というわけで更に温度の高いミルクでラテを作ってみた。
同じようにかき回しつつ放射温度計と棒状温度計で両面から計ると、今度は60度超えてる!よし、これでどうだ、みんなで飲んでみるぞ!
「・・・ん?」
「・・・微妙」
「・・・甘くない」
「・・・味しない」
というわけでカップに注がれたあと60度になっているというのはかなりヤバイ感じだった。
60度がどのくらいの熱さかというと、ず・・・ずず・・・アチチ、という感じだ。すこしフーフーしないとゴクリとは飲めない。
この温度ではミルクの甘みはすでに薄くなり、ミルク自体が変質していることが感じられる。ぐるぐるかき混ぜて棒状温度計と放射温度計の差は2~3℃である。常に空気に触れている表面は、かき混ぜても常に数度、棒状温度計を下回っていた。
今回の検証の結論はこうだ。
出来上がりの状態で50℃くらいというのはとても美味しいので、味的なジャッジはこれを適正とする。
しかしチマタで言われる65℃がもっとも甘くなる、という話は無視かい!という突っ込みに対しては、次のような推測をする。
スチーム終了時からカップに注ぎ、お客様の目の前に届くまでには少なくとも1分程度のタイムラグがある。すなわち、スチーム終了時点(ここが最高温度、おそらく65℃近辺である)からピッチャー内のミルクの温度は刻々と下がり(ピッチャーを回したり、トントンとするなど中のミルクが移動することでどんどん温度が下がる)、更に注ぐときは空気中を移動するわけでグングン温度が下がり、更に注ぎ終わった後の表面からもどんどん熱が奪われ、1分経過後の出来上がりのカップの表面温度は40℃台まであっという間に下がっている。表面温度の下がりかたを放射温度計で測ると、もっとも熱いときは静止状態でも数秒で1℃ほども下がるのだ!それがかき混ぜたり注いだりしながら1分間である。表面から奪われた熱が、1分の間にミルク全体の温度を10度ほども下げることは容易であると思われる。
つまり、飲んだときに「ずずー、ゴクリ」と飲めるような温度がもっともミルクの甘みを引き出しているというのが正解で、サーブされた時点で60度もある、つまりアチチと思うような温度の場合はスチーム時に70℃以上に上がっていた可能性が高く、甘くないミルクになってしまったと考えて良いと思われる。
ミルクの温度は、ほんの数度で印象が思いっき違うものだという、良い検証であった。
おまけ。
念のため、その後、出来上がりで65度にミルクをスチームしたのだが、これはとても熱くて飲むことができず、まったく甘みが無く明らかに加熱しすぎであった。はっきり言って、こんなミルクで作ってはラテも台無しだ。
蕎麦の世界では「煮え前は恥、煮えすぎは恥ではない」と言われるが、ラテの場合は「加熱しすぎは恥、加熱不足は恥ではない」といったところであろうか。


Published in エスプレッソ技術

4 Comments

  1. たかし たかし

    はじめまして。
    カプチーノはぬるいほうが美味いって聞きますけどね?
    60℃くらい~70℃が限界だと思います。

  2. ホゼ ホゼ

    こんにちは!コメントありがとうございます!
    ラテ/カプチーノの温度というのは、よくお店で遭遇するのより、もう少しぬるめのほうが良さそうですね。
    温度を実際に測るというのはとても楽しく、勉強になりました。放射温度計がほしくなりました。

  3. たかし たかし

    お返事ありがとうございますm(_ _)m
    熱いのはシアトル系(スタバとか)が流行って持ち歩く為に温度が高めって以前聞きました☆
    イタリアではぬるいのが普通なんだそうです。
    実際、自分で飲んでても甘みが感じられるのって、温めですしね。
    サーモグラフィとかでとりながら作ったら面白いかもしれませんね。

  4. ホゼ ホゼ

    こちらこそコメントありがとうございます!
    この実験をしたカフェで、例の放射温度計を買いましたんで、今度、もっと詳細に温度と味の関係を調べてみたいなと思います。
    やっぱり甘いと感じるのは「ぬるめ」なんで、味を優先させればどうしても温度を上げにくいですね。
    かと言って、普通、日本人はコーヒーやお茶などの飲み物はアツアツが普通なので、あんまりぬるいのはどうかと思うときもありますが。
    そのへん、ぬるいと言われたらこれこれこういうわけでこの温度が適温なんです、という説明をしなきゃと思います。
    またボチボチこのブログを覗いてみてくださいね!

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