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SCAJ中級カッピングセミナー②

さて、ここに一人の登場人物がいる。T君である。彼は某地方で豆のネット販売をしていて、かなりファンもついており、出張コーヒーサービスやイベントにも顔をだし、成功しつつあると言ってよいだろう。熱心なコーヒーマニアであり、カッピングもきちんと経験してきている。
彼とはツイッターで知り合い、今日初めてリアルに会ったわけだが、彼はこのような経歴からある程度の自信を持ってこの中級カッピングセミナーに来たようだ。
僕にしても、いくつかのセミナーを経て、また普段もカッピング会に参加するなどしてスキルを上げてきたし、また、週末の移動カフェでは週替わりのシングルオリジンのスペシャルティコーヒーを使ったエスプレッソを提供している。僕もまた、ある程度の自信を持ってこのセミナーに来た。
・・・が、しかし。
セッション1のあと二人で「アカン、全然取れてへん」「だめだ、全く取れてない」と、泣きそうな顔で肩をガックリと落とし、慰めあうハメになった。
僕達が取れてないことは、程度の差こそあれ、間違いない。ちょっと自信もって来ただけに、思いっきり打ちのめされてしまった。
(某地方、とボカしたのに思いっきり関西弁だなこの人は)
セッション2は復習問題だから、落ち込んだ気持を切り替えてなんとかこなしたが、その後ゴハンを食べに行く途中、ずーっと「取れてへん」「取れてない」「アカン」「だめだ」と念仏のように繰り返しながら歩いた。一人加えて3人でサンドイッチショップでランチにしたのだが、全く食欲が出ずもそもそと暗い顔を突きあわせて食べて、大の大人がグチりまくっていたら昼休みの時間がギリギリになってしまい、慌てて早歩きで会場に戻るという体たらくである。
まだ午前しか終わっていないが、そのくらい、このカッピングセミナーは衝撃的だった。
さて、午後のカッピングは産地がバラバラで4サンプル、その後一つ加えて順番を変えて5サンプルである。
20100616134800.jpg
セッション3ではすごいひっかけ問題があった。これは僕はもちろんのこと、まんまとほとんどの人が引っかかり、関根・丸山両講師が小躍りせんばかりにニヤニヤしていたという見事なワナであった。
まず、さっきのクリーンカップを意識しながらゆっくりとカッピングしていく。慌てると、間違った先入観から思わぬミスを積み重ねてしまうから、スロースターターでいいじゃないかと自分に言い聞かせ、ほかの人がさっさとすすって点数をシートに書きはじめても、自分のペースを意識して落ち着いてカップし始めた。
ひっかけ問題のサンプルは、華やかに思える酸、ボリュームのある甘み、キャラクターの立ったフレーバーを持っている。つまり、個々の項目の「量が多い」のだ。その質の良し悪しを判断できなければ、点数が高くなってしまう。そして、多くの参加者が、量に引っ張られて質を見分けることができなかった。
ものすごく冷めてから、講師が言う内容をよーく思い返して注意深くカップすると、確かにこれは「質が良くない」のだ。例えば、甘いことは甘いが美味しくない甘みだ、という具合だ。カッピングシートには質の良し悪しを記入する(それが点数になる)わけで、量が多かろうが少なかろうが、質が悪ければ点数は高く付かない。もちろん質の悪さというのは、例えば質の悪い甘さはクリーンカップやマウスフィールにも悪影響がある。それらの点数も低くなるということなのだが、実際にはその量に惑わされ、マウスフィールが良く思えてしまったり、甘さのボリュームに隠された雑味などを感知することができずクリーンカップに思えてしまったりするのだ。
関根講師の言葉である。「量はまずアタマから取り去って、質だけを見てください」
おおおおお、それができれば苦労しねーんだよという心の叫びは置いといて、質だけを見るとはどういうことか。
質を見るとは、その味が濃かろうが薄かろうが、好ましいか好ましくないかを判断する基準を持つということだろうと思うが、まだまだそこに達するには修行が必要そうだ。
結果的にはこのセッション3、合計点では、このひっかけに見事に引っかかった以外は、良くはないがダメというほどでもなかった。しかし、点数のつけ方として5点、6点、6.5点というあたりで細かく指導された。合計ではそれなりになっていても、細かく見ると間違いだらけということだ。特に、クリーンカップの点数がひっくり返る(高くつくべきを低く、低くつくべきを高く)というところが2箇所あり、これは思いっきりダメ出しされた。
さて、セッション4、サンプルを一つ足してもう一度。ひっかけに引っかからないように、量を質と勘違いしないように、慎重に慎重にカッピングを始める。
これも復習なので、さっきと同じサンプルを見分けられればあらかたカタがつく勝負だ。と思いきや、プラスされたサンプルがどれかわからない。すでにヘトヘトであり、集中力も限界、その上復習なのだから間違いは許されない、そんな状況で新入りがどれかわからないのだ。もう涙目である。本気で半泣きになりそうになった。
ひっかけはわかった。もうひとつ、コマーシャルもわかった。残る3つ、これのうち、二つがデッドヒートである。オリの中のクマの如くカップの前をウロウロと往復し、もう沈んだ粉に触れそうなくらいカップして最終的に決断を下し「これが一番好きだ、だからこれが一番高い点だ。悔い無し!!」と報告しに行ったところ、まあまあですというような歯切れの悪い返事。え~正解じゃないの!?
結局、僕が一番高く点を付けたのは、COE上位豆のうち、パカマラだけを集めたロットであった。
点数的には、デッドヒートのもう一つのほうのサンプルが、上に来るということだ。
パカマラ。 ・・・ええ、大好きです。間違っちゃないです。大好きだから点が高いんです。だからどうした、それが悪いのかあああああぁぁぁぁぁぁ~~~~~
というわけで午前の大外し、午後のひっかけ、最後のパカマラとまんべんなく波乱万丈なSCAJの中級カッピングセミナーが終了した。
「これはぜんぜんダメだ、軽くテングになってたけど、実は実は井の中の蛙だったんじゃないか。まるで取れてない。同じセミナー受けてても、ほかの参加者とは雲泥の違いだ」とかなりショックを受けたセミナーだった。
特にクリーンカップ、これが難しい。これがぜんぜん取れてない。ということがわかっただけでも、行った甲斐があるってもんだ。行ってよかった。
以上、カッピングセミナーでした。おしまいおしまい。
と思いきや、このあとT君と下北へ行き、B君、 E君、H君、S君、M兄さん、M君、A君の全9名でツイッターのコーヒークラスタのオフ会となった。
なんでも地ビールがうまい店だそうだが、あいにく僕はお酒が飲めない。しかし「ありえない」「なにこれ」「信じられない」というようなとてもビールに対する感想とは思えない言葉が飛び交うに至り、ちょっとずつナメることにした。
僕、ビールなんて苦くてなんでも同じでしょと思っていたのだが、なんのなんの、まるでフルーツジュースのようなフレーバーなのね。こりゃすごい。
誰かが一杯注文するごとに回し飲みして「オレンジ系、ネーブルとか甘みの強いやつ」「青りんご、マスカットもあるかな」「これはレモン!」などとひとくちごとにみんなプロファイルを発表しだすあたり、コーヒークラスタだなーと苦笑してしまった。まあ僕も「お、これはメロン!」とかやっていたのだけどw
ものすごい濃い~男子9名のオフ会はとても楽しかった。
この中で今、明らかにプロを目指しているのは僕とT君だけなのだが、日本にはこんなにアツいコーヒークラスタがいる。彼らのためにももっと良いスペシャルティコーヒーを、エスプレッソを紹介したいと思った。そしてまだ見ぬコーヒークラスタのためにも、もっともっとがんばんなきゃなーと、勝手に日本のコーヒーの明日を背負ったような想いと身震いするような道の険しさを感じながら、常磐線に乗ってウチに帰ったら、なんと深夜0時を回っていた。朝5時起き、今日は長い一日だったなー。
お疲れさん、自分。そしてがんばれ、自分。


Published in エスプレッソ技術

4 Comments

  1. たかし たかし

    カッピングって難しいんですね(汗)。
    やったことないので今度調べてやってみますm(_ _)m

  2. ホゼ ホゼ

    こんにちは!
    カッピング、難しいですねーw
    コーヒーの良し悪しを客観的に数値であらわすためのカッピングは、好き嫌いやなんとなくではダメで、ちゃんと勉強をして経験していくことでできるようになる、ある意味職人芸みたいなもんらしいです。僕はまだまだできてなくて、レポートの通り残念な感じなんですがw
    カッピング、機会があれば体験してみてください。
    コーヒーの評価とはどんなことなのかという勉強になると思いますよ~

  3. 初めまして。KIYOと申します。
    私はまだカッピング体験数える程度なんですが、ぞっとするような展開ですね。
    私も地雷とCOE間違えたらシャレにならんと焦った事もありました。
    しかしブログ中にありました、質の悪い甘味と言うのが、イマイチぴんと来ませんでした。
    例えるならどのような味なのでしょうか。

  4. KIYO KIYO

    初めまして。KIYOと申します。
    私も何回かカッピング体験してみて、地雷とCOE間違えたら大変やと冷や汗物の経験をしたことがあります。
    ところでブログ中にありました、質の悪い甘味ってどのような感じの甘味でしょうか?
    想像がつかなくて…

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