この用語が全国で一般的なのかどうか知らんけど、同業者がお互いに商品を購入しあうことを「いってこい」と言う。
ま、お金をこちらが使うのが「行って」、あちらがお金を使うのが「来い」なわけだ。説明というかそのまんまだけど。
僕はこの「いってこい」が大好きである。
なんで好きなのかという理由だが、もちろん、おなかが減っているときに同業者の商品を購入しておなかを満たす、という実利的な意味合いもあるし、知らない同業者とお近づきになれたり、親交を深めたり、よその商品を研究したりといろいろな理由が考えられると思う。こちらが購入すればあちらからも購入してもらえるという期待もあろう(これは逆に向こうが先ならこちらが購入するだろうという期待を向こうが持つという諸刃の剣だが)。
しかし、僕がこの「いってこい」を好むのはただこの一点の理由からである。
「非ゼロサム」であるから。
wikipediaより抜粋
非ゼロ和(ひゼロわ、非ゼロ和ゲーム、非ゼロ和的状況、ポジティブ・サムゲーム)とは、複数の人が相互に影響しあう状況の中で、ある1人の利益が、必ずしも他の誰かの損失にならないこと、またはその状況を言う。
この点が、ある人が勝つと他の誰かが必ず負けるというゼロ和とは異なる。非ゼロ和的状況は、獲得しようとする対象が、固定的でない、もしくは限定的でない場合に起きる。その状況の参加者の間で、資源を分配しあうというよりは、資源を蓄積していく状況に当てはまり、そこでは、ある人が利益を得たことと独立して、他の人も利益を得ることができる。
わかりやすい設定で説明してみよう。
商店街には11軒のお店がある。それぞれ1000円の商品を販売している。原価は100円である。現在、在庫は10個ある。
ある日、この商店街にはお客さんが一人もこなかった。そこで、商店街の店主たちはほかの店全部で1個ずつ商品を購入することにした。
それぞれの商店には、1000円の財産がある。内訳は、【100円(商品一個の原価)×10(在庫数)=1000円】である。
商店は11軒あり、自分のところを除いて一店一個ずつの買い物をするとなると、
・それぞれの店は10人の客が来る
・それぞれの店主は10件の買い物をする
ということになる。するとどうなるか。
各商店は一円も使わずに財産を増やすことに成功してしまうのだ。
10軒で1000円ずつ買い物をするということは、合計10000円必要になる。しかし、10人のお客さん(他の店主)が来て1000円の商品を一人一個買っていくわけだから、10000円の売上がある。つまり、
・使うお金と入ってくるお金は同額
ということになる。差し引きゼロ円である。
この日、商店街にはお客さんが来なかったわけだから、売上はゼロ、お店でじーっと店番していたとしたらお金を使わなかっただろうから、支出もゼロ円の可能性が高い。つまり「いってこい」をやらなくても差し引きゼロ円であったろう。
ではこの「ふたつの差し引きゼロ円」は何が違うのか。
最初、お店には財産がいくらあっただろうか。そう、1000円である。
売れていない商品の原価100円×10個である。
しかし「いってこい」をやったあとのお店の財産はいくらあるだろうか?
1000円の商品×10個=10000円である。
いいいいい一万円??あっという間に千円が1万円に化けた。しかもコストゼロ。お互いに買い物をしただけで財産が10倍に増えたのである。狐につままれたような気分だ。
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もちろん、厳密に考えるとこの理論にさまざまな反証ができるだろう。しかし、間違いなくこれは言える。
お買い物という行為自体が「非ゼロサム」なのである。もし10000円の買い物をして、10000円の商品が売れていれば、お金の流れだけを見ればお店の差し引きはゼロかもしれないが、お互いに財産は増加しているのだ。(←ここがミソ)
一見無駄に思える「いってこい」という習慣、実はちゃんと理由があったんだねー。
というわけで、僕の大好きな「いってこい」、皆さんも意識してはいかが?
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