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それは一つの基準に過ぎない。昨今のスペシャルティコーヒーとかラテアートとか。

コーヒー業界の人ではないがコーヒー業界で一目も二目もおかれている(某大会で優勝したり、コーヒー器具のメーカーにこの彼のレシピが公式採用されたりとか、どう考えても並みじゃありません)という、不思議な人なのだが、本人は至ってマジメな好青年で無類のコーヒー好き、という僕の友人のブログにこんな一節が。

ぼくはコーヒーのグレードを分けるのに便利なので、スペシャルティ、コマーシャルといった言葉を使うことがある。でも、正直なところ、そんな言葉による区分をコーヒー飲む時には不要。間違いなく、いま飲んでいるバンカムツルのコーヒーは、美味しいものだし、とても甘いコーヒー!
ぼくたちはまだまだ、コーヒー豆本来の良さを味わいきれていないのかも、と思った。
『バンカム ツルのコーヒー。』 – BAR14Nの憂鬱なラテアート

このブログ、めっちゃ面白いです。コーヒー好きで訪問したことないって人は是非読むべし!です(僕のブログに来ている時点でコーヒー好きなのは間違いないだろうから、つまりは今すぐ上のリンクを踏んで見に行ってこ~い!ってことです。わはは)
この記事を読むと、彼がひとつの疑問を持ったことがうかがえる。
コーヒー業界がおおむね「酸の質や甘さを重視した方向」に向かっているが、ここのコーヒーはその括りで評価するには難しいところがあり、スペシャルティコーヒーという基準では計れないコーヒーの魅力がまだまだあるのではないか、という疑問だ。
もうひとつ、ツイッターで見かけたツイートにこんなものが。

ピックのラテアートは何が楽しいのだ、ペンで紙に描けばいいじゃないか
※原文のままだとググると出てきちゃうので、原文の意図を汲んで改変してあります。このツイートをした人を晒し上げるのが目的ではありませんので。悪しからず

このツイートをした人は、フリーポアのラテアートがかなり上手だ。どこぞのカフェで働いているのかしら(プロフィールには書いてなかった)。
最新のコーヒー事情にも通じているようで、ツイートには僕の知らないことも書いてあったりして感心した。
しかし、ラテアート界(そんな業界あるのかどうかわからないけど)がフリーポアに切り替わった後の世代のようで、「ピックで書くのは誰でも出来るし時代遅れ、フリーポアこそ難易度や芸術性が高く最先端」というような価値観を持っているようだ。
そして、その価値観でピックのラテアートをバッサリと斬ったのが上のツイートということになる。
コーヒーのことをいろいろと調べたり、情報を集めたり、業界の人に話を聞いたりしていると、大まかには業界の動向というのがわかる。
僕のつたない情報網でも、今の日本のコーヒー業界の一部が「スペシャルティコーヒー」「フリーポアラテアート」に向かっているのはわかる。
スペシャルティコーヒーは最初に紹介したブログ記事、フリーポアラテアートは後に紹介したツイートに当たる。
どちらも、コーヒー業界の現在のトレンドのひとつについてそれぞれの立場で、それぞれの考え方で意見を述べているわけだ。
コーヒーに絶対は無いと思っている。
言い換えると、コーヒーは自由であるべきだと思っている。
たとえば抽出方法について当てはめれば「エスプレッソマシンが最も優れた抽出方法である」というようなことは無いと思っている。
「どの抽出方法にも個性がある」これだ。優劣や上下は無い。方向が違うだけだ。
「金属フィルターに比べてペーパーフィルターは紙の風味が加わるのでマズくなる、ダメな抽出方法だ」というのは、一人の反証によりあっさりと崩れ去る論理だ。「紙の風味が加わるとコーヒーはうまい」そう言われたら、返す言葉が無い。
事実だけ述べれば、コーヒーに対する風味の添加という項目について、金属フィルターは「ゼロ」であり、ペーパーフィルターは「紙の風味を付加する」という違いがあるだけだ。
前者のブログ記事は、とても示唆的である。COE以外の評価基準であれば、COE方式で評価して漏れたものの価値をきちんと評価できるのではないか、という提言である。それはすなわち、COE方式は万能ではない、という、業界にどっぷりと浸かっていると盲点になりがちな、しかし至極当たり前のことを言い換えているのだ。
後者のツイートはいただけない。フリーポアだけが価値あるもので、その他(ピックで描いたり、おそらくはチョコソースなどで絵を描くなども含んでいる)は価値が無いと言うスタンスだ。事実だけを述べれば「フリーポアラテアートは注ぐだけで絵柄を制作、ピック使用ラテアートはピックを使用して絵柄を制作」というだけのことで優劣や上下など無いのだが。
どちらの意見が、コーヒーについて正しく、誠実であるかというのは、一目瞭然だ。


Published in エスプレッソ技術

One Comment

  1. 拍手!!
    最終的には、提供する側、飲む側、それぞれが
    「自分の価値基準」をしっかり持っていること
    が大事ってことですよね。
    両者がミートしたとき、それは幸せな出会いに
    なる。そういう瞬間が多いのが「豊か」だって
    ことなんじゃないかと。

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