僕らがコーヒーって聞いて思い浮かべるのは、普通はカップに入った茶色の液体であろう。あるいは、お店で買ってきたグラインドする前のコーヒー豆、または挽いた粉を思い浮かべる人もいるかもしれない。
しかしコーヒーと一口に言っても、from seed to cupではないがさまざまな段階がある。
大雑把に言って、コーヒーの種子から木を育てて実を収穫するまでの【コーヒー農業】、実を市場へ届けられる形態(生豆)にする【精製業】、それらを保管し適宜移動させる【保管・流通業】、もちろん誰かが買ったり売ったりするわけで【輸出・輸入業】、その生豆を焙煎する【焙煎業】、コーヒー豆にしたり抽出したりして消費者へ売る【小売業】などがある。
さらにこのおおきな分類を細分化していくと、もっともっと専門的な職業があるし、この中に説明できてないコーヒーに関するお仕事だってたくさんある。
コーヒーは、石油に次ぐ世界第二の産業だそうだ。金額がそれだけ動いているということは、働く人もそれだけ多いということだ。
いったい、日本でコーヒーに関する仕事をしている人はどれだけいるのだろうか。世界ということになるともう想像もつかない人数が働いているのだろう。
日本で生まれ日本で育ったらたいていの場合、コーヒーはそれなりに身近なものである。家にインスタントあるいはレギュラーのコーヒーが無いという家はほとんど無いだろうし、家族で外食すればコーヒーを飲む大人をよく見るだろう。街を歩けば自動販売機に缶コーヒーが並んでる。しかしコーヒーを飲む行為が子供時代となじみがないために、小さいころの夢が「コーヒー屋さんになるー!」という人は相当少ないはずだ。
例外はあるだろうが、たいていの場合、大人になっていく段階でだんだんとコーヒーに触れていき、興味を持ち、そしてごく一部の人がそれを職業にしていくわけだ。むしろ、興味もなにもなかったけど就職先がたまたま大なり小なりコーヒーに関する業務があるところだった、という場合のほうが多いのだろう(例えば外食チェーンに就職など)。
世界第二の産業であるコーヒーだが、現代の日本でそれを職業にするというというのは、意外とハードルが高いというか狭き門というか、それほど一般的な選択肢にならないということだ。
コーヒーに関する仕事は、一生モノであると言える。それは、実際に僕が働いてみて感じていることだ。勉強しなきゃならないことは山ほどあるし、経験を積まないとわからないことだらけだ。人とのつながりで解決しなきゃならないこともあるし、ビジネスの規模を大きくしないとできないことだってある。そして時代の変化にあわせるようにコーヒー文化もコーヒービジネスも変わっていく。コーヒービジネスにもたくさんのジャンルがあってその全てに精通するなんてとても一生のうちにできるもんじゃない。
僕がどんなにがんばっても、残りの人生すべてを賭けても、僕が成し遂げられることなどコーヒーの世界の中では砂漠の砂一粒に過ぎないのかも知れない。それほど幅が広く奥が深い世界だ。やるだけの価値は、ある。
と言いながら、コーヒーに関する仕事は、パートタイムでやってみる価値もある仕事なのだと思う。例えばカフェでパートタイムで働いてみよう。特殊な技術が無くただのホール係だとしても、良いカフェで働けば一杯のコーヒーがどれだけお客さんを楽しませているかわかるはずだ。小売店で働けば、一般的に考えなきゃいけないこと学ばなきゃいけないこと努力しなきゃいけないことというのは、当然身につくとして、カフェや焙煎店で働けばそれ以上に、すばらしいコーヒーのある生活をすごしている人たちを垣間見ることができるわけだ。一人のコーヒーファンとして、人生の一時を提供する側にまわってみるというのは、悪くない。
しかしながら、コーヒーを職業にするには日本は少々分が悪い。
白状するが、僕はバブル終末期に大学で日本文学を学ぶ文学青年だったわけだが、いざ就職という段になりいわゆる「ホワイトカラー」の仕事しか選択肢に入れてなかった。つまりよしんばサービス業の企業に就職するにしても、その組織の中のデスクワークをする部門にしか興味が無かったということだ。時代だったと言えばそれまでだが、大卒はネクタイを締めて仕事するもんだという風潮であった。
結果、僕はコンピューター関係(なんとアバウトな括りだw)の会社に入ることになったわけで、それからのキャリアはまあまあ今でも役に立ってるので後悔はしてないが、飲食業をやりたいという気持ちが少なからずあったにも関わらずそれを現実的な選択肢として持ち得なかったというのは、やっぱり少し社会がおかしかったというか時代が悪かったというか、そんな気がしている。(このへんのことは、今発売されてる「珈琲時間・春号」に取材されたのでちょっと書いてあります。良ければ読んでみてください)
たぶん、今でもそうだと思うんだよね、いい会社に入るか公務員になるというのが、社会としてある程度「成功」として認識されてて、コーヒー(に限らずサービス業だったりブルーカラーだったり)を職業にするのは一般的に「不正解気味」な感覚なんだろう。じゃないと学歴社会がまだまだ続いている理由が無いもんね。そして一回「成功」な職場に入れたらそれを定年までまっとうする。それこそが真の成功、というようなモデルが、上の世代を中心にいまだに根強くあると思う。
でも、そういう認識を共通に持っている人たちってそろそろ旧世代なのかなあという気がしているので、若い人たちがこれからどんどん既成のそーゆー枠組みを超えてどんどんいろんな職業にチャレンジしてくれてるのかなあという気がする。コーヒー業界も含めて。
もちろん超がつくほどの就職難でいわゆるホワイトカラーな就職先が減ってるというのもあるだろうし、フリーターなど非正規雇用でやむなく一時的に飲食店などに籍を置く若者が増えているというのもあるだろうし。欧米がそうであるように自分に合う業種や職場を探すということが容易になりつつあり、職場を移るというのがキャリアアップなどと称して市民権を得てきているということも後押ししている。
いろんな事情によりコーヒー業界に籍を置いて、その後コーヒー業界にどっぷりと漬かるもよし、新たなビジネスチャンスをコーヒー業界に見つけるもよし、あるいはいい勉強したって言ってほかの業界に移って行くもよし。
世界第二の産業だけに業界は古く、アタマの固い人たちもたくさんいる。古い体質だと思うところもたくさんある。若い子が参入して「おかしいぞ?」って思うこともたくさんあるだろう。よその業界から入ってきたら「この方法のほうが優れてる」ってノウハウをたくさん知ってるかも知れない。お客さんだってどんどん世代が入れ替わってる。もっともっといろんなことがやれると思うし、やるべきだと思う。それには若い子が大挙してコーヒー業界に押し寄せてきて「働かせろ!」って言ってくるくらいじゃないとダメだなって思う。今変えようとしたことが実際に変わるのは、しばらく後になる。時間がかかることをやれるのは、若い世代の特権だ。
世界はどんどん狭くなる。外国語を自在に操れる日本の若い子が世界で飛び出して、いろんなところで活躍している。行き来だって今以上にラクになるはずだし、物流だってもっとスピードアップされるだろう。オンラインで世界中がつながっていく。そんな時代にコーヒー業界に飛び込んで、コーヒーの生産から小売までのあらゆる段階に出向き顔を突っ込み、好きな分野で仕事ができる。日本がアメリカが生産国がなんて関係なく、コーヒーで世界がもっともっと隅々までつながっていけるのだ。
僕はもう旧世代に片足突っ込んでいるようなもんだけど、できればこういう若い世代の子たちがもっともっとコーヒー業界に興味を持ってくれて、働き甲斐がある職場で活躍できるような、あるいはアイデアとやる気があればなんでもチャレンジできるような仕組みにしていきたいなと思う。そのために、僕ももっともっとがんばらなければなー。
そして若者よ、コーヒー業界にカモーーーーーーーーーーーーン!
というわけで、この記事が、このブログの300本目になるんだそうです。管理画面を見ると。祝300記事!パチパチ!
2009年2月からはじめたブログなので、足掛け三年ちょい。一年に100本ペースで書いてるわけね。とは言っても、最近はペースが落ちつつあるので、このままいくと今年は100もいかないような気がする・・・うーん、ツイッターやFBを減らしてブログにリソースを割くかw
日本全国に400万人はいると言われているロングブラックファンの皆さんに向けて、これからも細々と書いていきますので、今後とも合言葉は「ビバ!ロングブラック!」でよろしくお願いしますね~
是非是非ブログへのエネルギー配分もお願いします。なかなかじっくり読めるコーヒー関連のお話は少ないのでとても楽しみにしています。(実は毎日ノゾイテマス)
知り合いでカフェをやりたい人が悩んでいます。田舎ではまだまだ「水商売」的な捉えられ方で周囲が賛成しないというんですね。封建的な地方は今の後期高齢くらいの方々がミマカリませんと大きくは変わらないような気がします。・・かといってコーヒーを飲みに行くのは抵抗無いわけだしまた田舎はおじいちゃんおばあちゃんを相手にしないと日中は若い子は居ませんものね。
お年の方々も、公務員、教員以外仕事じゃないと思っている人たちにももっと頭を柔らかくして欲しいです。
コーヒー産業がこれからも幸せに繋がるよう(最後の段階でおいしいコーヒーが飲めるのは幸せですから)理解して欲しいです。
ある難しい大学を出、居酒屋をやっている人が「大学どこ?」と聞かれるのが一番嫌だといっていました。そんなとこを出てこんなことをやっているのかと決まって言われるそうです。
もっともっと人がオープンマインドになってそれぞれの生き方を尊重できるようになると良いですね。
コーヒーは業界の人には良く知られているけど一般の人は知らないことが多すぎます。(どの世界もそうですが)理解していただけるよう私は草の根的にコーヒーの世界を知らせていこうと思っています。
なんだか支離滅裂ですが・・・次回を楽しみにしています。
珈子さんこんにちは!いつもありがとうございます!
ほんとブログ書きたいなって毎日のように思っているのですが、ちょこちょこtwitterやfbやってると時間が無くなり・・・良くないですねw
さてコーヒー屋さんも水商売と言われるのは日本全国どこも同じようで、実際僕も言われたことあります。あと、大学出て(僕の場合はサラリーマンもやって)コーヒーを売るっていう仕事をしていると「何故!?」って顔されたり言われたり。コーヒーを扱う人のうち、一定の割合の人はたぶん高学歴だし、ビジネスもきちんとやれる人がやってるわけですよ。僕の場合は今、その流れの中で一番お客さんに近い小売をやっているわけですが、ここにも大学出の人がたくさんいる。そして彼らは生き生きとビジネスをやっているわけです。(もちろんお金も稼いでいる)
ご友人には「がんばれ!いまはビジネスが出来る人は自分でビジネスをどんどん起こしているよ!古い体質に縛られることは無い!」と言ってあげたいですね。
僕も毎日草の根活動です。コーヒー文化がもっともっと良いものになるように、がんばっていきましょう!