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これからコーヒーの世界で身を立てようという若者へ Ver.1

なんだか僕のところに「カフェやりたいんです」という若者がときどき来るんで、ちょっと助言というかアドバイスというか大きなお世話を少し書いておきます。
と言うのも、東京近郊にお住いなら、コーヒー飲みに来たついでに話聞いてくよってこともアリかと思うんだけど、やったら遠くから「カフェやりたいんす!!!!!!!」って来られると、なんか与太話だけ聞かせてガンバレヨーって送り出すだけじゃダメかな、テキストでも用意して講義ぶったほうがいいのかな、って思っちゃったりするんで、まあこれ読んで店に来た気になってくれればいいかなと。遠くからだと、交通費、バカにならないから。
んで、とりあえず思い立ってタイトル通りの記事を書くことにしたわけだけど、まとまらなかったときのことを考えて「Vol.1」ということにさせていただくとする。
ちなみにここには、どうやったら儲かるかとか、商売が長続きする秘訣とか、集客するためにはとか、営業戦略とか、そういうことは書かないよ。というかそういうことは僕が知りたいので、儲けかたや商売の秘訣を教えてくれるというご奇特な方はどうぞ当店までお越しくださいませ。
じゃあ何を書くかというと、これからコーヒーの世界で身を立てるために必要(だと思われる)三つのポイントである。
(なぜ三つか。三つと書くと説得力が上がるのである。これは余談だが)
では、始めます。
(1)コーヒーの勉強(コーヒービジネスもね)
学校に行ってる時分、あまり勉強が好きではなかったという人がどのくらいいるだろうか。やれ年号を覚える、やれ数式を覚える、漢字の書き取りだ物理の計算だと、面白くなかった思い出ばかりが浮かんでくるという人、少なくないのではないか。
しかし、コーヒーの世界に飛び込もうというなら、少なくともコーヒーで商売するに当たっての最低限のお勉強はしなきゃならないと思うよ。大変でもね。
って言うと、たいてい、こんな答えが返ってくるんだよね。
「好きだから勉強なんか苦にならないですよ」
ははあ、そうですか、それならいいんですけどね。ちゃんといろんな分野を勉強しなきゃなりませんよ?コーヒーそのもののことだけじゃないんですよ?
と言うのも、今の若い子の勉強熱心なことは僕も感心するくらいなんだけど、どうにも分野が偏っている気がするんだよね。コーヒーの産地や銘柄、海外のコーヒーカルチャー、ラテアート、こういうことについての熱心さはびっくりするくらいなんだけど、たとえばさらっとでもコーヒーの抽出の科学的な考察をしたことがあるだろうか、日本のコーヒー市場における缶コーヒーの売り上げの割合はどれくらいか調べたことがあるだろうか、コーヒーという食品を扱うに当たっての食中毒の可能性や対策などを網羅的に学んだことがあるだろうか、コーヒーの価格の決定の仕組みやステークホルダーは誰なのか知っているだろうか、そういう、コーヒーをビジネスとして考えたら自然と学ばなければならないことを「後からついてくるだろう」とか「まだそういう段階じゃない」とか思っているのか、はたまた「そういうことは知らなくても問題ない」とでも思っているのか、後回しにしている人が多いような気がする。
こういう勉強は確かに楽しくないという面もある。でもそういうことを知っているか知ってないかというのは恐ろしく違いが出る。すごく詳しくなればそれはそれでいいけども、そうでなくてもオサワリくらい知ってたほうがいい。ほんの少しでも勉強して、誰かと話をしていて話題になったときにウンウンと頷きながら少し気の利いたコメントを言える程度になれば、うんと違うのだ。
コーヒーマニアならコーヒーのことを断片的に部分的に深く知っているということでも問題ない。しかし、ビジネスということになれば、それでは困る。深く知る部分があることはもちろん歓迎だが、なるべく「知らない部分」はツブしておきたい。
たとえば、自家焙煎のカフェオーナーになったとしたら、あなたはメーカーであり商社であり卸売り業者であり小売店でありサービス業であり・・・一人何役もプロとしてこなさなければならないのだから。
(2)自分の本気度をアピールする(まずは名刺から)
「名刺、持ってますか?」と聞いて、持ってる人に会う確率が非常に低いのは残念なことである。なぜ名刺を持たないのだろうかと心底不思議に思うのだ。
たとえば僕は今、自家焙煎店を営んでいるわけだが、もし「いつかわからないけど、カフェやろうと思うんですよ」と名刺を渡されたら、いつかこの人のところに自分とこの豆を売り込みに行こう、って思うはずだ。これは商売人なら誰でもそう思うわけで、あなたが名刺を渡して「いつかカフェを」と言えば相手は「よし、こいつがカフェ作るときは自分ちの商品を買ってもらおう」と思うわけだ。もし相手が個人だったら「へえ、ならこの人がカフェ始めたら飲みに行こうかしら」と思ってくれるかも知れない。
名刺には名前と電話番号だけでもいい。カフェの名前が決まってたら名前を、ロゴもあればロゴを、売り文句があればそれを、とにかく書いて作ったほうがいい。そしてそれは貰った人が「家庭用プリンタで自作かー」と(多少)がっかりする出来のものではなく「おおっ、かっこいい名刺ですねえ!」とびっくりするくらいのものがいい。なぜなら、かっこいい(そして良い紙を使って業務用の印刷をした)名刺はお金がかかる。つまり本気度が違うわけだ。人はなぜか知らんが本気の人を応援したくなるようで、やるかやらないかわかんないような人よりも、石にかじりついてでもやってやるぜ的なオーラを持ってる人のほうが、応援のし甲斐もあるってものなのだ。そのオーラをとりあえず簡単に感じてもらえるのが名刺である。
「店もないのに名刺なんか恥ずかしくて」なんて思わないで欲しい。カフェ準備中ですって書いた名刺刷って持っとけって。そして会う人会う人に配りまくれ。
もしあなたがいつか店を持って、そのときに店を紹介したいのなら、そのとき使うのはショップカードである。でも店があっても誰かにあなた自身を紹介するのは名刺だろう、それは店が無くとも同じことなのだ。あなたを紹介するために、現在のあなたを表す名刺を作るべし。
(3)売り物の評価が正しくできること(カッピング大事)
トッププロがやっていることを真似するのは大事だ。あなたがやっているレベルと、トッププロがやっているレベルは本当に段違いなのだ。しかし、それがわかるのは、あなたがトッププロがやっていることとまったく同じことをして、そして歯が立たなかった(あるいは結果が出なかった、または手に負えなかった)ことを経験した時だ。
しかしなかなか、大きな釜で焙煎したり、3連のハイエンドエスプレッソマシンで抽出したりするチャンスは無い。なかなかトッププロと同じことをしたいと思っても難しい場合が多い。
さて、そこで手軽な例をひとつ。「カッピング」である。
コーヒー豆が少々、グラスが二つ、スプーンが一本あれば出来るので、トッププロがやっていることを簡単に真似することができる。では真似してやってみよう。・・・結果はどうだったろうか。トッププロ(トッププロのカッパー)と同じようにそのコーヒーを評価することができただろうか?
って質問にしてみたけど、出来るわけないよね。カッピングってそんなに簡単じゃない。僕なんかいまだに自信ないし、最前線で活躍するカッパーとの力の差たるや大人と子供だなといつも思わされる。今からコーヒーの世界に飛び込もうって人がトッププロと同じように評価できるわけがないのは自明なのだ。
サイフォンにしてもエスプレッソにしてもペーパードリップにしても、そのコーヒーの評価が正しくできるかどうかというのは、大事である。
魚屋が手元の魚を見て、獲れたてかそうでないか、どんな種類の魚かわからなかったらどうだろう? 刺身にして食べてみて美味いか不味いか、お造りがいいのか煮魚にするなら味噌か醤油か、この魚の味をみて一尾300円で仕入れるのが妥当なのかどうか、そういうことがわからなかったらどうだろう?
どうだろうって困るとしか言いようがないわけだが。
コーヒーも同じことである。手元のコーヒーを見て飲んでその価値に正当な評価を下せなければ、困ってしまう。
魚屋がキレイに見栄えのするお造りを作るのはそりゃ大事な技術だ。しかしその魚が古くて美味しくなくて、それでも値段は高かったらどうだろう? そんな魚屋にまた買いに行こうと思うだろうか?
くどくどは言わないが、カッピングはそういうことだ。自分が扱う商品(コーヒー関係で身を立てる場合、ほとんどどんな形であれコーヒーを商品として扱うだろう)の価値がわからなくてどうする。
それともうひとつ、カッピングというのは言語だと思ってもらうとわかりやすい。カッパーはカッピングという共通の言語でそのコーヒーについて会話することができる。もしカッピングを知らなければ、そのコーヒーについてカッパーとカッピングというレベルでの会話ができない。そういう意味でも、カッピングというのはコーヒー関係のビジネスで身を立てるに当たっては最低限の基礎的な技術であると思うので、どうかがんばって習得して欲しい。
というわけで、三つの大きなお世話なアドバイスは以上です。
だんだん眠くもなってきたし、これ以上長文になると誰も終わりまで読んでくれなそうなので、このへんで終わりにします。
これ以上のことを聞きたければ、どうぞお店まで来てください。これからコーヒー業界に入っていこうってアナタを僕は大歓迎しますんで、僕が出来る範囲でいっくらでもアドバイスいたしますよ。
コーヒー業界とコーヒー文化をいっしょに盛り上げていきましょう!


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