先日、焙煎機が不調になり、6時間の格闘の末に運よく復旧できた。
そのときの顛末を書くことで、みなさんが思いもかけないマシントラブルに見舞われたときに「どうしよう?どうしたらいいの?」とならないために役立つのではなかろうかと思うので、ちょっと長くなるけれども読んでもらいたいなと思う。
事件は、日曜の午前10時に起こった。焙煎しようとしたら、焙煎機に火がつかなかった。
そういえば、ここ1週間くらい、ちょっと点火が不安定だったような気がする。点火ボタンを押してから、火が着くまでに少しタイムラグがあった。果たしてそれが何か関係あるのか、それはわからないが、とにかくいま着火できないのは困る。なんとかせねばならん。
まず、行動を起こす前に、自分にできることは何か考える。
もっとも良いのは、焙煎機メーカー(正確にはアメリカ製のため、日本の代理店)に来てもらうことだ。しかし今日は日曜日、会社は休みだ。電話もつながらんだろう。それに、サービススタッフを呼んだらお金がかかる。どうせ日曜なんだからここはあきらめて自分でなんとかする方向でがんばって、それでもダメなら月曜に電話しよう。今日は焙煎をしなくてもなんとかある豆で商売ができる、明日の午後イチくらいに復旧できていればまったく問題が無い。つまり、あと24時間以上時間があるわけだ。機械や電気回路の専門家ではないが、バラしてみればなんか悪そうなところもわからんでもない。少しは知識や経験があるからね。残された時間の中で自分にできることをやりつくしてから、サービススタッフを呼ぶなりなんなりしよう。
僕が、トラブルが起きた時にまず考えるのはコレである。トラブルが起きたままで耐えられるリミットはいつか、それまでに自分ができることがどのくらいありそうか、である。
とりあえず自分でやると決めたので、さらにそこから、何ができるのか、あるいはどういうトラブルなら解決できるのかというのを考えてみる。
電気回路のトラブルだとしたらお手上げだ。テスターも無いし、そもそもテスターがあったところで電気的な知識は非常に乏しい。というわけで、単純にコネクタが抜けてるとかそういうんでない限り、電気回路のトラブルであれば、これは僕には修理できない。もしそうであれば、月曜日にならいとなんともならん。コネクタの抜け程度の修理(これを修理と言うかどうかは別だが)ならば、自力で復旧があり得るので、もしそうだったらすごくうれしい。
次に電気系統でないとしたら、ガスのトラブルが考えられる。これまた何の知識もないし、相手がガスとなるとガス屋さんの出番になるので、これはさすがに月曜回しということになる。
その二つでないとしたら、残るは機械的なトラブルであると考えられるので、これならなんとかなりそうな気がする。一生懸命やってみる価値がある。空気の通り道をひたすらバラして、原因を探るということであれば、丸一日あればなんとかなりそうだ。うまくすればもうちょっと早くわかるかもしれない。
もちろん、原因を調べてみたらどこかの部品が壊れてたという可能性もあるので、今日復旧できるかどうかはわからないけれども、原因さえわかれば、対処方法が具体的に検討できる。それだけでも儲けものだ。
トラブルの原因が何であるかによって、自力で修理できるか、専門家に頼むかが決まるのだが、どの範囲であれば自力で修理できるかを切り分けることで、かなり自分が何をやらなければならないかというのが整理されてスッキリする。
さあ、自力で修理できる可能性がある範囲は、機械的なトラブルであり、部品が完全にいかれてるということではない場合と、コネクタが抜けてたという場合だ。がんばって原因を探ってみよう。
まずは、パネルやボックスになっているところをバラす。配線配管が見えるようにしていくわけだ。
丸裸にして、目視あるいは触って確認できるようにしたら、まずはどこか抜けてたりグラグラしていたりするところが無いか、確認する。全てちゃんとくっついていれば、ここからが本題だ。どこにトラブルの原因があるのかを探していく作業だ。
今回、点火されないという症状なのだが、エアーというワーニングのインジケーターが点いてて、それが現象として確認できている。このエアーのインジケーターは、ガスを点火させないようにしているものだというのはわかっている。つまり、エアーのワーニングの原因が解消されれば、火は着くはずだ。
しかし、このエアーのインジケーターが空気そのものの量なのか、流速なのか、酸素濃度なのか二酸化炭素濃度なのか、あるいはなんだかわからないけどそれ以外の空気の何かを計っているのかがわからないので、まずはエアーのインジケーターの裏側の配線をたどってどこにその制御盤があるのかを探し、その制御盤には何の計測器のデータが入力されているのかを確認する。もしそのあたりのどこかに原因があるとすれば、それは計測器なのか、制御盤なのか、それらをつなぐケーブルなのか、計測器が計っている相手に何かトラブルがあるのか、ということが考えられる。そしてその一つずつがちゃんと機能しているかどうかを調べれば、原因がわかるという寸法だ。
手順はこう。可能性がありそうな場所をバラしてそのひとつずつが正しく動いているかをどうやってか確認する。もし最少の単位のみを抜き出して動作が検証できなければ、それを含む小さなユニットがちゃんと動いているか確認する。もしそのユニットだけで動作確認できなければ、もうひとつ大きなユニットの動作を確認する。
とやることで、トラブルがどこに隠れいているかというのをある程度ちいさな範囲に特定できるわけ。
では確認のためにバラしていこう。
この時に大事なのは「どうくっついていたか(どうバラしたか)」と「どのくらいくっついてたか(どのくらいの力でバラしたか)」である。どうくっついていたかというのは、今はデジカメとかスマホがあるから写真撮っておいてあとで確認すればいい(昔は配線をバラすときは荷札を付けてたんけど。便利になったなあ)。そしてどのくらいというのは、サービスマニュアルを見てバラしているわけではないので、どのくらいのトルクで締め付けるかがわからないのだが、ネジにはそれぞれ規定の締め付けトルクがあるはずだ。というかある。それを、緩めるときの力でだいたい覚えとくわけだ。
バラす、問題が潜んでいないか確かめる、組む、動かす、結果を確認する。これが1セット。
問題が潜んでいないかというのは、清掃してみたり、グラついてたりしないか、切れてたり穴があったりしてないか、そのほか正常に動くために何か邪魔するようなものが見られないかを確かめること。それがスイッチユニットであればちゃんとスイッチとして動いてるかとか。
そして大事なのは、1セットで手を入れるのは1か所だけにすること(あるいは1ユニット)。こゆことやってると、組んでみたら前より悪化してた、ということもよくある。あっちゃいけないんだけど、なにしろテンパってるし慌ててるし、余計に悪くしちゃうことがあるんだよね。そういうときのために、ひとつ前の段階にすぐ戻れるように、手を入れるのは最小単位にしとくのがいい。もし悪化してもひとつだけ戻せばいいわけだからね。
さあ、この手順で怪しそうだと思われる「空気の通り道」をひとつずつツブしていったわけだが、1か所を確認するたびに、本体から後ろ、煙突までの排気ライン全部組み直してるわけだから、そりゃ大変。どうやらこれが最も怪しそうなというところにたどり着くまでになんと5時間半。
これ何かと言うと、負圧センサーと排気パイプを結ぶラインの途中の管なんだけど、ここをバラしているときに違和感が・・・ っていうか緩い! というわけでここのゆるみから空気を吸い込んでしまい、負圧センサーの圧力計に適正な負圧がかからなかたのではなかろうかという結論になり、ちゃんと締め付けてみたら、ビシっと点火!
これでめでたしめでたしというわけでありました。
今回は、エアーのインジケーターが光っている、つまりエアフローに異常がありますよと教えてくれいていたわけで、最初にある程度調べなきゃならないところの目星がついていたこと、そしてその目星がついたところの確認を自力でできそうだったことから、トラブル発生から決着までが意外と短かったわけだけど、それがどんな問題にしても、たいていの場合はこれと同じ手段で解決まで確実に、しかも効率よくたどり着くことができる。ひとつひとつ可能性をツブしていくっていうの、確実なのはわかるけど効率に関してはめっちゃまどろっこしいんじゃないの?って思うだろうけど、これが意外と効率的でもあるのだ。
で、結局はネジのゆるみ、という「大山鳴動して鼠一匹」な結果に終わったわけだが、とは言えなんとか復旧できて良かったなあ。無駄にお金を使わずに済んだし。というか何か機械モノを買ったら一定期間が経過したときに増し締めをしたほうがいいんだろうなあ・・・
Comments