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カフェを開業したいあなたへ(1)お金をかけずに始めよう

カフェの開業という相談をよく受ける。
僕の基本的なスタンスは「YOUやっちゃいなよ!」なんだけど、闇雲に始めてすぐに頓挫、閉店となるとすごく悲しいので、シリーズ「カフェを開業したいあなたへ」を連載しようと思う。
この一連の記事を読むと、だんだんあなたは開業したくなくな~る・・・という、とても厳しい、そして現実に即した(そう、現実は厳しいのです)内容になると思う。

ではさっそく今日はその1回目、お金をかけずに始めよう、である。

カフェ開業の最初のヤマは、開業資金である

カフェを開業しようという人で、潤沢な資金があり、好きなように好きなだけかけられるという人は、この下は読む必要がないけど、たいていの場合はそうじゃないだろう。
そうじゃないとなるとどうなの、ということだが、僕も同じ状況だったがつまるところお金が無いわけである。まあだいたいはかなり限られた予算で、ということになるだろう。
そこで、最小限、このくらいはかかるよということと、最低限、ここにはお金をかけたいぞ、というところを書いていく。

そんなにお金かけないでミニマムに始めよう

たまに恵まれた人がいて、好条件の居抜き物件にたまたま行き当ったりすることがあるのだが、そういうケースは参考にならないので置いておいて、とりあえずお金をあんまりかけずにやろう。初期投下資金もミニマム、運転資金もミニマム、在庫もミニマム、とにかくお金をケチってケチって始めてみよう。
始めてからすごく儲かれば、再投資をしていけばいい。たいして儲からなければ・・・それはそのときに考えるとして、ね。
では、開業まで、どこをどうやってケチって漕ぎつけるか、具体例をもとに考えていこう。

最初の問題であり最大の問題は、物件である

ミニマムに始めるとしても、どうしたって避けて通れない出費、それもかなり大きな出費が物件取得費だ。
テナントを借りないとお店が始まらないので、不動産屋さんを廻ったり、物件サイトを見たりして、なんとか安い物件を探すことになる。
ちなみに東京の山手線の円の中では相場が2万円~/坪と言われている。もちろん一等地はもっと高いわけで、銀座なんかで借りようと思ったらこれですよ。
ginzabukken
と、これは極端でも、やっぱり場所のいいところは高い。
ではどうするかと言うと、東京近郊に、つまり都心から離れていくわけである。千葉埼玉神奈川なら場所によりかなり安くなる。茨城栃木まで行くとずいぶん安くなる。もっともっと離れれば、山村や海沿いの田舎町ならもっともっと安くってなるんだろうけど、それは現実的ではないので、せめて人口数万というあたりで大都市部まで2時間くらいあれば行ける感じのところで考えてみる。そういうところなら、カフェを始めてもなんとか軌道に乗せることができるはずである。
東京近郊でなければ、近くの大都市圏(札幌仙台横浜名古屋京都大阪神戸福岡など)あるいは県庁所在地あたりをベースに考えてもらえればと思う。

「いやいや、どうせやるなら都会でしょう、カフェは立地商売とも言われるわけで人の少ないところにわざわざ行ってやるこたあない」
という意見ももっともであるが、家賃の高いところでやるならもっともっとお金がかかるわけで今回の話にはそぐわないので却下。
(ちなみに家賃が高いところは収益性が高いので、維持費が高くても収益も高い。家賃が低いところは収益性が低いわけで、結局どっちでやってもあんまり結果としては変わらないのだが、それはまた別の機会に}
では、例としてこんな物件で始めるとしてみる。
kisarazubukken
家賃なんと5万円。素晴らしい。人口数万人という自治体(たいていは市であろう)の市街地中心部でも探せばこのような物件は見つかると思う。
実はこのサンプルの物件はあまり条件が良くなくて、飲食だと敷金が多く取られたり、更新が2年だったりするのだが、家賃がこのくらいで、駅からがんばれば徒歩でも行けるくらいには市街地でなおかつ駐車場付きだったりする物件を探すのは、それほど難しいことではないだろう。
更新は3年(2年は短い)、あとフリーレント期間があるもの、そして管理費など強制の付帯費用(商業ビルなんかだと、カンバン代まで取られたりする)が無いか安いものを探そう。
退去時にどこまで復帰させればいいかというのも注意だ。床をはつるのはOKだが出るときは埋め戻してね、なんてことになると大変。エアコンなどを残置物として買い取ってもらえるのか、買い取らないけど置いて行っていいのか、取り外さなければいけないのか、そういうことはよく聞いておこう。
よほど都心部でない限り、車で来るというお客さんが少なくないはずで、駐車場がついてるのかは大事だ。家賃が安くても駐車場が1台5千円で4台分借りるなんてことになると2万円のアップ、馬鹿らしいよね。

で、家賃5万円の物件を取得すると、どのくらいのお金がかかるのか。
敷礼で(どんなに多くても)4か月、フリーレント1か月もらっての、最初の月の家賃と契約手数料も含んで50万円あれば大丈夫だろう。

まず、50万円。これが計上される。

内外装、設備はできるだけDIYで

外装は、もし業者にお願いすると小さい看板一枚で10万円、オーニングで50万円とかかかるので結構高い。ファサード一式で100万円かかることなどザラである。扉を替える、窓を作るあるいは潰すなどやり始めると外装だけで数百万円も無くはないほどにお金がかかる。
カフェであるとわかれば良いのであれば、大きな板にペンキでCafeとでも書いておけば良い。ノボリを立てたり、A看板を立てたりするのもかなり有効である。自分でやるとすると、10万円あれば「カフェであることが通りすがりの人に認識される」程度の外装ができるはずだ。大きくなくてもロゴ入りのカンバンや、入り口の戸や窓にカッティングシートで店名やロゴというのは、必要になるが、これは大掛かりでなければほんの1~数万円というところだ。
内装は、これまた内装業者にお願いしたら、坪当たり50万円くらいが当たり前、オシャレなこだわりの内装にすると坪当たり80万円とか100万円とか聞く。この物件でも50万とすると600万円になってしまう。
しかしながら、スケルトンであればそこにモノを置いていくだけで店になるのであるから、必要なぶんだけテーブルとイスを買って置けば客席は完成だ。テンポスバスターズのような中古の店舗用品を扱うお店を利用するとかなり安く上がる。だいたいイスが1脚3千円、テーブルが1台5千円といったところで、20席の店舗なら10万~15万くらいで席が埋まる。
そしてキッチンのほうであるが、こちらもできるだけ中古でそろえることと、家庭用で済むものは家庭用で済ますことが大事である。
冷蔵庫、ガス台、電子レンジ、オーブン、その他調理に必要そうなものはたいてい家庭用のほうが安い。そして意外と丈夫である。使いにくかったりいらない機能がてんこもりだったりするけれども。
電化製品は全部で20万くらいでそろえる。作業台は10万。電気工事はしちゃダメよ。ガスも工事はしちゃダメ。水道は大丈夫だけど気をつけて。といっても、電気もいくつかコンセントがあるはずだから、そこに最大1500Wまでで済むように電気製品をつなげて、ガスはいまはチャック式の口だから、ガス製品をつなぐだけだったら自分でやって大丈夫。
水道は、塩ビの水道管を買ってきて適当な長さに切ってエルボなど接続部品でつなげてけば大丈夫。液体のシール(接着剤)があるから漏れるってこともほとんどないと思う。
で、あとは販売する側のカウンター、商品の陳列台などだが、これも中古の家具屋さんなんかでみつけれくればいい。什器で10万円。
ということで、内外装で50万円が計上される。

前項までと合わせてここまで100万円。

コーヒー屋ですからコーヒーの器具をね

まずカップのたぐい。もう安く済ますんなら中古またはIKEA。どっちにしろカップアンドソーサーで50客も買っても1万円てとこ。ちょっとよさそうな中古のカップでもその倍くらいかな。グラスやお皿など、揃いのものだと中古では難しいから、バラバラでもいいでしょう。食器で5万円。
次にコーヒー器具。。低予算で始めるなら、絶対にドリップである。プラのドリッパーが300円、サーバーも置かずにカップに抽出するスタイルなら、サーバーもいらない。ドリップ台は自作。ほんの1万円ほどでコーヒー器具がすべて揃う。
こまごました、キッチンで使うボウルやタッパーなんかもIKEAで調達してこよう。1万円。
ここの項目では7万円が計上された。

前項までと合わせて107万円。

エスプレッソマシン? スチームパンク? 儲かったら買えばいいよ!

いよいよ飲食店として許可を取りますよ

食品衛生責任者の資格保持者がいなければならないので、一日潰して取りに行こう。講習を受ければ取得できる。これが1万円。
次に保健所に行き申請をする。飲食店と菓子製造の許可を受けるためには合計3万円。

前項までと合わせて111万円となった。

最後にちょっとお金をかける

前項までを終わらせると、一応お店がスタートできることになる。実際に営業するには食材などが必要になるがそれはまた次回以降に触れることにして、形としてはなんと111万円で店を作ることができるということになった。
しかし、これだけでは、まだ足りないところがある。
ここまではケチケチして最低限のお金で、ってやってきたのだが、この項では「絶対必要ではないけれどもここにはお金をかけたほうがいい」というものを挙げていく。
低予算で開業という場合、予算が厳しければこの部分が削られることになってしまう、もしくはそもそもこんな予算は考えてなかった、ということになっていると思う。しかし、むしろこの部分のお金は必要な投資であり、省略すべきものではないと考えて、無理に捻り出して欲しいと思う。予算的にどうしても難しいという場合でも、ほかの部分を削ってもである。

まずはロゴマーク。デザイナーさんにお願いしよう。素人が作るものとは雲泥の差があるはずである。聞くところによると1万円~10万円ほどで引き受けてくれるそうだ。どうしても、ここだけはすんばらしいのが欲しい。この先何年も、何十年もこの商売を続けていくとなれば、最初の最初からきちんとしたものを作って、カンバンとしてやっていきたいのだ。
次にウェブサイト。これは自作もできるけれどもやっぱりプロに任せるほうが出来がいいのと、自分でそれをやる時間をほかの開店準備に充てたいというのがある。30万円くらいでかなりイカしたのができる。もちろん独自ドメインを取得する。レンタルサーバーと独自ドメインのセットがあるから、そういうのを利用するといいだろう。
そしてショップカード、名刺、フライヤーなどのペーパー類。これはロゴを作ってくれたデザイナーさんについでにお願いしよう。まるっと印刷まで含めて10万円。
はい、この項で40万円。

前項までと合わせて、151万円となった。

初期在庫やこまごました消耗品などで50万円ほどを計上して、総合計で200万円、これが最低限の予算と考えられるのではなかろうか。

もう一つ、奥の手を使う

200万円という予算で可能になった。そこで、さらにひとつ奥の手というか、もうちょっと節約のためのひと工夫。
それは何かと言うと・・・

ズバリ、全部の金額を1割削れないか検討する、である。
お店を作るにはお金がかかるのだが、お店を作る段階ではお金を生み出さない。
そこで、余裕のある資金計画にするためには、支出を減らすしかない。支出の項目数が減らせないのであれば、項目ごとの金額を減らすしかない。
というわけで、新品で買うものを中古にする、買うものの大きさを小さくする、いろんな角度から考えて1割くらい減らせないか考えてみる。

意外と、これ以上無理と思っているものが減らせたりする。壁は自分で塗るから内装業者には頼まない、これは良い。ずいぶんと安く上がる。で、ホームセンターに行ってペンキとハケを買う。バケツを買う。念のため手袋や保護眼鏡を買う。どうせやるなら本格的に。 ・・・というのも気分が出ていいものだが、もうちょっとがんばって支出を減らしてみよう。汚れてもいいような服を引っ張り出してきて、眼鏡は100円均一のやつ、ハケも100円均一、ペンキはなるべく使いまわしが効くように壁も床も塗れるやつで大きなサイズのお徳用を、とやっていけば少し安く済むだろう。
オーブンは中古で家庭用のが安く出てるから、せめて二段で焼ける庫内の大きめの、というのは将来を見据えて良い買い物だが、まあ後で儲けてから大きいのを買うとして最初は(きっとお客さんが少ないし)最低限一個のケーキが焼けるくらいのやつにグレードダウンしとこ、っていう感じ。

全部で1割減らせたらなんと20万円。がんばってみよう。

で、なんでそんなにチマチマと支出を減らす努力をするかというと(ロゴデザインに10万円も支払っておいてである)、だいたいこういうときは「せっかくだから」「あとあとのために」「これは必要だよね」などと考えて、実際にせっかくだから買ったほうがいいものもあるだろうし、あとあと役立つものを買っておくのも大事だろうし、必要なものは全部買っておいたほうが良いということもある。でもね、開業資金が潤沢でないというケースであるから、普段、欲しいものは何でも買えるという状況ではないだろうね。アレが欲しいって思っても、うーん欲しいけど今買えないなあ・・・とガマンする、そんなことが多いはずだ。それなのに「こんな時だから」と気が大きくなり大枚をすーぐにはたいてしまうなんてのは、ちょっと違うと思うのだ。
今からお店をやるという、人生でも何度もないような特別でスペシャルなオンリーワンな時ではあるのだが、しかしながら、お店を始めたらそれが日常になるのだ。始めるという時は、今までと今からでは全く違う生活というか仕事というか人生というか、違う自分になるタイミングなのだが、始めたあとの自分を考えてみよう。お店を維持することが仕事になる(人生や生活ということでもある)。その時になって、湯水のようにお金を使えるだろうか。仕入れ先との値段交渉、廃棄ロスとの戦いなどチマチマと爪に火をともすように節約をしなければならないのである。そのときになって、なんであの時あんなにお金使っちゃったんだろうなあと思っても後の祭りである。

たくさんのお金を使うタイミングだからこそ、その1割を削減するだけでその節約は大きな金額になるのである。
開店後の自分のために、心して、節約して欲しいと思う。

ロゴとウェブサイトとショップカードにお金を使うわけ

オーブンや椅子、食器棚は最初にチープなものを使っても後で儲けたら新しくて立派なのを買えばいい。
ところがロゴやウェブサイトはそうはいかない。儲かったから、あとで立派なのにっていうわけにはいかないの。
武士は食わねど高楊枝ではないが、体裁というものは本当に大事で、一点豪華主義ということでもないが(いやあるか)どこかにピカっと光るもの、それも開業からずーっと何年も何十年も使えるもの、そしてそれが嫌味ではなく立派なのに共感を得られやすいもの、更にはそれがビジネスに良いイメージと効果を与えるもの、もちろん今時の消費者の消費行動中に食い込んでいけるもの、そんなものというのがロゴでありウェブサイトである。
どうせ作らなければならないので、ちまちまと節約しなきゃならないところなのだがここだけはしっかりとプロに制作してもらいたい。

自分で描いた手書きのロゴにしたい、という場合でも、それをもとにしてプロにデザインしてもらったほうが、より良いものになる。
これから何年も、何十年もおつきあいしていくロゴマークであるから、ちゃんとしたものを作って、長く使っていって、マークを見ただけで「あーあそこだ」と思われるようなものにしたい。

おまけ

ここまで200万円でお店を作るという話であったが、実際にもっとミニマムにスタートすることはできる。
根気よくテナントを吟味し、普段から店舗に使えそうなものをストックしておくことで、実際にスタートするときの初期投下資金を減らすことができる。スケルトンのテナントを借りるとしたら、100万円というのが本当に最低のところだと思う。物件取得費が30万円、内外装に20万円、キッチンに20万円、そして初期在庫と雑費と運転資金に30万円である。工夫すれば、そして根気強くやれば、そして普段から準備をしていれば、不可能な数字ではない。すぐに始めるんだ、ということでなければ、将来のために用意しておくものを持ち物の中に増やしていこう。

次回予告

今回の記事で、お店を作るときのハード面(のコスト)について書いたので、次回はソフト面、というかお店をつくる時のコンセプトの固め方など書いていきたい。

おまけ2

ちなみに美容室ではどんなに安くしようとしても、普通の美容室だと1千万は下らないという世界だそうです。カフェってそう考えると資金的にもやっぱり参入障壁が低いと言えるのかも。

おまけ3

タダで使えるものは使ったほうがいい。
宣伝のためというのもあるし、誰かとつながるというのは楽しいので、SNSをやろう。twitter、facebook、instagramなどが有名である。もちろん、SNS全盛の今でも、blogもやるといいと思う。こういうものは最近はやって当たり前というところがあるので、なるべくネット上にお店を露出させていこう。


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