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カフェを開業したいあなたへ(2)コンセプトが大事

お店をスタートするには、一つにはお店そのものが必要である。一般的なカフェであれば、賃貸物件か持ち物件かはさておき、とにかくハコ(建物)が必要である。そして、その中でカフェを営業するに足る設備が必要である。最低限(保健所的にも)キッチンとカウンターが必要だ。そして保健所、もしかしたらその他所轄官庁の許可や届け出など、法律的に営業できるお墨付きが無ければならない。
そして、そこまでを用意するために、およそ200万円が必要であることを前回の記事で書いた。

では、入れ物(ハード)が整えばお店が始まるのか、というとそうではない。ある意味、ハードの部分は誰でも簡単に、何にも考えずに、労力もかけずにそろえることができる(湯水のようにお金さえかければ、であるが)。
そのハードに魂(魂というとなんだか大げさだな、と思ったら、魂を「想い」とか「なりたい自分」とか「どうしても解決しなければならない問題」とか「誰かに夢を見てもらえる何か」とか「サムシング」とか、なんか適当に言い換えてください)を備えるのが、あなたが開業前にやる最も重要な仕事である。
そしてその魂的な何かをある程度誰かに説明できるような一般的な概念にしたものがコンセプトである。

コンセプトとビジネスモデルの混同

お客さんがそのお店に来てお金を払ってくれる、言わばメシのタネになるものがビジネスプランである。
ビジネスプランは非常に重要で、金融機関でお金を借りたりするときに必要不可欠であったりする。もしビジネスプランが貧弱で、どうやってお金を稼ぐ気なんだろう?と思われるようでは、誰もあなたのお店を支援していこうとは思わないだろう(貸し倒れになっちゃ困るからね)。
ビジネスプランの作り方はウェブで検索するといろいろ出てくる。
ビジネスプランの作成-中小企業庁
ビジネスプランが優秀でなければならないが、もしビジネスプランがどうにもうまく考えられないのであれば、それはまたプロに頼むというのも良い方法かもしれない。

それに対して、コンセプトである。コンセプトとは「全体を貫く基本的な概念」である。これこそ、あなたにしか作れない、というかあなたにしかわからないものなのだ。
だから、コンセプトに「リーズナブルな値段で最高の一杯を提供する」なんてことはあり得ない、とわかる。それは、要約したビジネスプランであり、そのカフェをこれからずーっとやっていくにあたって、ブレてはいけない根っこの部分、ではないからだ。
同じように、例えば「スペシャルティコーヒーを高品質な焙煎で」とかもダメ。「国産紅茶専門店」とかもダメ。それらは、すべてお金を稼ぐ手段であり、それが「全体を貫く基本的な概念」にはなり得ないのだ。
じゃあコンセプトってどういうことなの、ということになるが、コンセプトとは、つまり、こういうジョークになぞらえられるようなものなのだ。
「健康で長生きするためなら、死んでもいい」
そんなアホな、あはは、と笑われるかも知れないが、これがコンセプトである。
死んでもいい、というのは、ビジネスプランとしては最低である。企業ならば、倒産してもいいと言っているようなものだ。しかしなぜ倒産してもいいと言っているかというと、商売繁盛で企業が長続きするなら、と前置きしている。すなわち、商売繁盛で企業が長続きするためになら、企業として最も悪い状況となる倒産というリスクすら厭わない、という逆説的なメッセージである(が、通常、論理的におかしい話であるため、ジレンマとなりジョークが成立するのだが)。
というわけで、前述の例であれば、
「最高の一杯を提供するためなら1杯が1万円になっても仕方なし」
「COEの1位の豆を思うように思う存分焙煎する仕事がしたい」
「国産紅茶で世界征服」
こういうのがコンセプトたり得るというわけである。

もっとニッチなものであれば
「あらゆるガレットの限界を打ち破るべくチャレンジしつづける」
「ヴィンテージ家具に囲まれて飲む紅茶は萌え死ねる」
もっとゆるいものであれば
「仙人みたいにコーヒー焼いてひっそりと生きていきたい」
「ワッフルを見てるだけで人は幸せになる、ワッフルこそ至高であり究極」
もうなんだかわからない。
わからないんだが、わかる気がする。わかる気がするけどこれでメシ食っていけるの? 馬鹿なの? 死ぬの? みたいなことになる。
じゃあそれをどうすりゃいいのさ、というのがビジネスプランである。
ここをクッキリと区切れるかどうかがキモである。
コンセプトがあるから、ビジネスプランを作ることができるし、それを実現するためのハコを作ることができるのだ。

で、さっき言った、ビジネスプランは誰かに頼むのもいいかもねというのは、コンセプトがあるけどそれをどうやってマネタイズできるかさっぱりわからないという人は、コンサルタントにお願いして、コンセプトをどうやってビジネスにするかプランニングしてもらったほうがいい。

たいていの場合は、コンセプトだけがあっても、ビジネスプランだけがあっても、成功はおぼつかない。

コンセプトはブレない。やってることはブレる。それって正解?

なにをやるか、やりたいかというのは、もちろん大事である。そして、たいていの場合は、やりたいことがあるので開業するのである。「あなたはなにをやりたくて(どういう風にやりたくて)開業するの?」と問うのはやめておく。そして、大事なのは、やりたいことは、変わるのである。だから、始めるときに「やりたいことをやるんだー!」と思って邁進したとしても、ゴールは動いてしまう、ゴールどころかルートも変わってしまい、どこを走っているのかわからなくなる。
コンセプトがもし「やりたいこと」だけで決まっていたとしたらどうなる? お店はどこを向いて走ればいいかわからなくなってしまう。

ひとつの寓話を紹介する。

とあるコーヒーマンがコーヒー屋を始めたのは、美味しいコーヒーを誰かに飲ませるためだった。
そのコーヒーマンは、焙煎を始め、自分の店を持ち、たくさんの人に自分が焙煎したコーヒーを飲んでもらい、喜んでもらうようになった。
彼は自身の技術が進歩すると同時に、焙煎したコーヒーの品質を上げるため、次第にコーヒーの原料に興味を持つようになり、より良い原料を探すことに仕事の比率を割くようになった。
そしてその熱意はコーヒーの原料を探し出してくるのみならず、コーヒーの原料を生産者とともに作るということになり・・・その後コーヒーの世界で世界を変えていく力を発揮していくことになった。

という話である。
寓話である。実在の人物にいそうな話であるが、気のせいである。

具体的にやりたいこと、というのは、人の成長とともに店の成長とともに変わっていく。そこをきちっと規定するのはあんまり得策じゃない。むしろ、具体的にやりたいこと(もしくは都度都度やること)というのは、これこれこうですと決めておかなくても、自然とやることになるのだ。

寓話の主人公のコンセプトは「カップクオリティ」ということなのだろうか。・・・架空の話なので、そういうことにしとこう。
カップクオリティを追及し続ける余り、最初にやってたことから全然違うことをやっているように見えるけど、根底に流れるのはカップクオリティをどうやって上げていくのかということなんだろう。最初から「コーヒーの世界を変えていく力となる」と具体的に目標があって、つまりそこがコンセプトで開業したわけではないだろう。現在、そのようになっているというだけで、そこがゴールでもないだろう。
つまるところ、具体的になにをしているかというのは、コンセプトさえ自分に正直であれば、本人的にはなにをやっていようが正解なのである。

コンセプトはお金を生まない

コンセプトはお金を生まない。むしろ、注意しないとお金(と自分自身の時間や労力)を使うばかりでビジネスを危うくする存在である。
もし、あなたのお店を作るときのコンセプトがずいぶんお金を生み出しそうであれば、それは間違っている。
コンセプトはあなたが胸を張ってお店をやっていくために誰に対しても堂々と主張でき、そしてそれを聞いた人が半ばあきれながら「ハハァ、そういうもんですかいな(ちっとも儲かりそうにありませんがなあ)」と思うようなものでなければならない。それほどに、コンセプトは孤高で神聖なものである。コンセプトをおろそかにするのは、自分が作る店をおろそかにするようなものである。コンセプトが打算的なものならば、自分の店が打算的になるのであり、コンセプトがなんとなくならば、あなたの店もなんとなくでしかないのである。
そして、コンセプトは結局、お金を生むためのものにはなり得ない。むしろ金食い虫のコンセプトを実現させるためにビジネスモデルを練ってお店を作ってお金を少しでも生み出さないとヤバい、というものなのだ。
やりたいこととやらねばならぬこととやるほうがいいこととやりたくないことのせめぎ合いである。

どうか、美辞麗句を並べた上っ面のコンセプトではなく、あなたの心の底にある「すべてを貫く基本的な概念」とやらを捻り出してほしい。もしそれが、誰から見てもおかしなものに見えるとしても、それがあなた自身なのである。

最後に(あるいは「コンセプトは商売抜き」の話)

店名とかコンセプトとかロゴマークとか、最近のお店はすごくオシャレでよく考えられてて、素晴らしいなあと思う。でも、なんだか「響かない」。それは、いかにも売れそうな感じに見えるからなのかも知れない。
カリオストロの城でルパンが銭形に「商売抜きだい!」とクラリスの誘拐(救出)を手伝わせるシーンがある。銭形はルパンを助けてクラリスをまんまと塔から救い出す。
ルパンは泥棒なので本来はクラリスを救出するのは「仕事」ではない。しかしついついクラリスを不憫に思い助けに行く、この「商売抜きだい!」の感覚、それこそがコンセプトなんだろうなあと思うのである。ルパンは命がけでクラリスを助けるのだが、それは文字通り「商売抜き」なのだ(結局あとからそれがお金につながるあたり「商売を一生懸命やれば、お金はあとからついてくるもんだよ」という、よく言う商売のキモみたいなのに似ているのは面白い)。

おまけ

僕自身のコンセプトは「まーちゃんにいつかうまいと言わせるぞ」である。いやこれマジで。ダメ出しをされなくなる日がくるまでがんばるぞ。
※SSEのコンセプトとは異なります

ご注意

言わずもがななんだけど、これあくまでも小さいお店を始めるという話でスタートしていることを忘れずにね。もちろん、資金力のある会社がどーんと派手にカフェを始めるというなら、もっと違うやり方になるのよ。

次回予告

次回はいよいよお店が始まったら、という話。個人店がいかに継続することに苦労するのか、そしてどうやって限られたリソースでお店を続けていくのか、いけるのかをお話しします。

おまけその2

電車の中で書くと乗り物酔いするね。うっぷ。


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