濃度と収率の美味しい関係

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一般的に、一杯あたりのコーヒー豆を増やしていくと、コーヒーは美味しくなると言われている。
もちろん、いくらでも例外のケースは存在するし、ものには限度というものがある。しかし一般的にそういう傾向があるのは間違いないところだろう。

それを踏まえて今回の記事では、濃度と美味しさの関係、そしてもう一歩踏み込んで濃度と収率と美味しさの関係を探っていきたい。

SSE基本のレシピ

さて、ここで標準的なレシピというのを設定しておく。これを基準にこの後の話を進めることにする。
ちなみに抽出方法はなんでもいいようなものなのだが、読んでいただいた方が検証や再現をしやすいように、ペーパードリップで抽出することにする。

【2杯取りペーパードリップ基本レシピ】
コーヒー粉 25g
コーヒー粉粒度 中挽き
抽出コーヒー液量 300g
湯温 90度
抽出時間 2分30秒
器具 ハリオV60 01

このレシピから、どの部分をどう変更するとどうなるのか、考えてみる。

濃度と収率についての話

濃度というのは濃さであるのでイメージしやすいと思うのだが、収率というのは少し聞きなれない言葉だと思う。wikipediaによるとこんな感じ。

ある物質を得るための化学プロセスにおいて、理論上得ることが可能なその物質の最大量(理論収量)に対する実際に得られた物質の量(収量)の比率である。…wikipedia

つまり、ペーパードリップコーヒーで言えば「コーヒーの成分を完全に煮出した場合の理論値を100とすればペーパードリップしたこのカップにはどのくらい成分が出てますか」ということである。その成分の量を計って「はいこれなら20%出てますね」ということになるわけ。

抽出効率という言葉を聞いたことがあると思うんだけど、例えばこういう風に使ったりするんだけど

コーヒー豆粉砕のポイントと目的
(中略)粉砕粒度の表面積の増大による嵩密度の調整(表面積を広め抽出効率を上げることは必要であるが、粉砕粒度メッシュが大きくなりすぎ、容器に入りきれないのを防ぐ)…wikipedia

混同しやすいのだが、濃度と抽出効率は違う。例えば、コーヒーをお湯にずーっと漬けておくと、濃度は上がるけど、それは抽出効率が上がったとは言わないのだ。濃度=抽出効率ではない。
そしてもうひとつ、抽出効率が上がると収率が上がる、というのも微妙に正しくない。抽出効率とは達成の速度であり、収率は達成の割合だから、相関はあるんだけどその値そのものが同じことを表すことはできないのだ。抽出効率=収率でもない。

話がちょっと逸れたけど、濃度とともに、収率というものを調べることで、よりコーヒーの性質をはっきりと可視化することができるということなのだ。
で、くどいようだけど繰り返しの説明。濃度と収率を可視化する、数値化するというのはその性質を調べるのにとても有効であるが、抽出効率を調べるのはあまり意味が無いというのがご理解いただけるだろうか。濃度は結果である。収率は濃度から計算で一意に求められるものなので、これも結果である。しかし抽出効率は過程あるいは条件であるため、濃度から一意に計算で求められない。

濃度と収率が変わるとどうなるか

ちょっと小難しい話が終わったところで、ここからが本題。濃度と収率の美味しい関係である。

濃度が変わるとどうなるか、収率が変わるとどうなるかという話であるが、まず濃度の話から。

濃度が上がると、濃く感じる。濃度が下がると薄く感じる。エヘン、どうだ。

とまあ何かの冗談のような話だけど、それ以上でも以下でもないんだよね、本来は。ただ、濃度が変わることで、風味の感じ方が変わってくるというのはある。

濃度が上がると、甘み、口当たりを感じやすくなる。濃度が下がると、フレーバーを感じやすくなる。

とまあ、こういう感じの傾向があるわけ。

そして収率はと言うと。

収率が上がると渋みや辛みを感じやすくなる。収率が下がると酸味を感じやすくなる。

という傾向になるわけだ。

これを図にするとこんな感じ。

濃度収率マトリクス2

レシピを変えると濃度と収率はどうなるの

濃度と収率の関係がわかったところで、前掲の基本レシピに沿って、それぞれの条件を変えると濃度と収率がどう変わるかを見ていこう。

まずはコーヒー粉量。増やせば濃度が上がる。コーヒーの粉が少なくて、出てきたコーヒーが薄かった、そういう経験が誰にでもあると思う。増やせば濃度が上がり、減らせば濃度が下がるのは経験的にすんなりとわかる感じだ。そして収率であるが、これは粉量を増やしたら収率は下がっていく。もしほかの条件が同じ場合、濃度の上昇よりも上回る収率の上昇は見込めないからである。

次にコーヒー粉の粒度。細かくすると濃度が上がる。この場合、収率も同時に上がる。コーヒーの粉を細引きにすると濃いコーヒーになるのだが、これは、同じ粉の量でも同じ時間内により多くの成分を抽出できるからだ。

そして抽出液量。少なくすれば濃度が上がる。しかし、収率は下がってしまう。より濃い液体になることはなるのだが、粉に接する液量が減るのであるから、収率は濃度を上回って増加することはできない。

湯温は高くすると濃度が上がる。もちろん湯温が高いほうがより抽出が進むため、収率も上がる。水出しコーヒーには抽出に時間がかかるのはこのためだ。

最後に抽出時間。これは長くすれば濃度は上がる。そして長くすれば収率も上がる。フレンチプレスをセットしてすっかり忘れて気が付けばとても濃いコーヒーになってしまった、というようなことである。成分がたくさん出るということは、収率も高いということだ。

とまあ、ひとつづつ並べて書いてもよくわからないので、図にしてみる。

濃度収率マトリクス

おおっ?

こう書き出してみると面白いね。濃度を上げることで収率が上がるもの、濃度を上げると収率が下がるものがあるね。
濃度についてはなんとなくイメージ通りだと思うんだけど、収率はちょっと直感的にわかりにくかもしれない。
そこで、その関係をこう言い表してみると理解しやすいと思う。

「収率を下げる要因は、目的とする抽出コーヒー液量に対してコーヒーの成分の総量を増やす、である」

それを踏まえてこう言い換えることができる。

「コーヒーは、粉の量を増やしたり抽出するコーヒー液量を減らしたりすれば酸味傾向となる」

おお、なんとなくわかってきたような気が・・・する?

そして収率を上げる要因はその他三つなわけだから、こうも言える。

「コーヒーは、湯温を上げたり粉を細挽きにしたり抽出時間を長くしたりすると渋み辛み傾向となる」

なんとなく経験則と一致する気がする、のではなかろうかと思う。
ついでに収率がわかってきたような気がするでしょ。

まとめ

SSEではアタゴのTDS計を使って、実際に濃度と収率を日々の業務に生かしているわけだけど、なかなか誰もがTDS計を買うってわけにもいかないと思うので、皆さんが濃度と収率を日々のコーヒーライフに生かす上で、ちょっとだけズルしてこう考えてみる。

まず、自分が求めるコーヒーの濃度に条件を調整する。そこから、風味傾向をストロング寄りにするには収率を上げる。逆にライト寄りにしたければ収率を下げる。
収率の上げ下げは、レシピのどの条件をどっちに振ればそうなるかはすでに学んだ通りなので、ざっくりとレシピをいじってみて、風味傾向の良いところにすればよろしいと思う。

そのときに、収率を上下させようとすると、どうしても濃度に影響が出るので、うまいことそのへんを調整してみてくださいね。うまく調整できれば、きっと好みのコーヒーになると思うよ!

おまけ

好ましい濃度の上限と下限、好ましい収率の上限と下限をグラフにエリアとして描画したとして、そのちょうど中心(つまり濃度も収率もちょうどど真ん中)のコーヒーが美味しいかというと、それもそれで美味しいんだけど、なぜかそれより中心を外れたところのコーヒーのほうがより美味しく感じるんです。
これはなんでだろうと考えると、理由は風味のメリハリなのかなあと思うんですが、どうなんでしょ。ちょうどど真ん中だと、バランスはいいんですが平凡というかとらえどころがないように思うんですね。少し中心から外れると、とたんに風味が生き生きとしてくるような気がします。
と推測するんですがこれは本当なのかどうなのか。誰か正解を知ってたら教えてくださいませ。


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