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「一般人のエスプレッソに関する誤解はこんな感じなのかな」と思う記事。

【ビジネスマンの「仕事力UP」応援サイト シゴトの計画】 というサイトの 【ニュース&コラム360°】というコーナーに11月11日にポストされた記事の話だ。
このサイトを運営しているのはリクルート社であるので、こんなブログで多少なんやかんや言ったところで針で引っかいたほどのキズもつかないだろうから、思う存分言ってみる。
と言っても、リクルートに対して何か意趣があるわけでも無いし、この記事を糾弾したいということも無いわけで、では何が目的かと言えば、コーヒーの専門家でもフリークでもないひとがコーヒーやエスプレッソに関して持っている認識ってのはこういうことなんだろうなぁというのを紹介したいだけなのだ。
では早速本文を紹介する。たいして長い文ではないので、全文を掲載する。
※リクルートやこの記事について権利がある人が本ブログを見て、問題があると思った場合は、コメントにその旨記入してください。著作権の侵害や貴社及び記者へ損害を与える目的は一切ありません。
 同じコーヒーでも、店によって値段はまちまち。例えば都心で昭和の香りのする純喫茶に入ったとすると、ブレンドコーヒー1杯で500~600円くらいは当たり前。だが、スタバやドトールなどのコーヒーショップやファミレスでは200~300円くらいが相場だろう。そうして見ると、1杯120円のマックのコーヒーの値段は、かなりの安さだと感じる。コーヒーの値段は、その店の業態、それから人件費や家賃などの固定費といったさまざまな要素を加味して変わるのだろう。
 だが、どんなコーヒーも、海外から輸入しているコーヒー豆を原料にしている以上、原価は一定のはずだ。そこであるコーヒーメーカーに、ブレンドコーヒー1杯の原価はどれくらいなのか、聞いてみた。
 すると、チェーン展開している会社の場合、コーヒー豆1kgあたりの原価は、1200円くらいが相場だという。で、 1kgのコーヒー豆から何杯のコーヒーを作ることができるかというと、約80杯。ということは、1杯のコーヒーの原価は15円ということになる。「ただ、ドリップ、サイフォン、マシンなどの器具によっては70杯もとれない場合もありますし、多量に人数分を淹れる場合は90杯以上取れることもあります」と、コーヒーショップの経営にこうした原価率の計算が欠かせない事実を語ってくれた。
 ちなみに、エスプレッソコーヒーの原価はどうなのか。実は、エスプレッソコーヒーというのはブレンドコーヒーに比べて深炒りをするため、少しくらい質を落としても味に変化がないらしい。しかも圧力をかけて抽出するので(一般的には9気圧)、ブレンドコーヒーの倍の量のエスプレッソコーヒーが取れるという。ということは、エスプレッソコーヒーの場合、1kg約1000円の豆で160杯も淹れることが可能というわけだ。この場合、1杯あたりの原価は約6円ということになる。
 エスプレッソコーヒー主体のコーヒーショップというのは、経営者にとっても意外に”おいしい”業態なのかもしれない。

さて、アラ探しや重箱のすみっこを突っつくのが目的ではないので、クリティカルな部分だけ指摘する。
まずはここ。
 だが、どんなコーヒーも、海外から輸入しているコーヒー豆を原料にしている以上、原価は一定のはずだ。
純喫茶に比べるとファストフードやファミレスは安い、スタバに比べてマックが安いというような話を受けて、値段の差は豆の差ではないと言いたいようだ。
海外から輸入すれば値段が一定なのか。農作物であれば年によって、いや月によってだって値段が違うのは当然だろう。工業製品じゃあるまいし。
遠くの国より近くの国のほうが運賃が安い、人件費が低い国のほうが価格が安い、そもそも育ちがいい品種を植えているほうが弱い品種を育てるより安くできる。そのほか日本に輸入される豆が産地や銘柄で値段が倍も三倍も違う理由はいくらでもある。
どうして原価が一定などという前提条件を思いついたのか。
そしてこの間違った前提条件に基づき話が展開していくので、更に間違いを加えて後半はどんどんおかしな話になっていく。
 実は、エスプレッソコーヒーというのはブレンドコーヒーに比べて深炒りをするため、少しくらい質を落としても味に変化がないらしい。
どっから聞いてきたのか・・・
確かにエスプレッソ=深煎りというのは(現在はエスプレッソもシティロースト程度が流行しているが)あながち間違った認識ではないと思うが、だから味に変化が無いというのは間違った結論だろう。というか、「深煎りすること」と「豆の質を落としても味に変化が無い」ということに、エスプレッソ特有の相関があろうはずが無い。
エスプレッソだろうがフレンチプレスだろうが、深煎りまで煎れば豆の特徴は薄くなるし、豆の質を落とせば美味しくなくなるのだ。
 圧力をかけて抽出するので(一般的には9気圧)、ブレンドコーヒーの倍の量のエスプレッソコーヒーが取れるという。
これまた圧力を勘違いしていそうな書きかただ。圧力をかけるのは重力(1G)で自然落下するよりもっと速く豆のあいだをお湯が通り抜けるためである。各種文献を見ても、エキスを抽出するためにどうやって圧力をかけるかということのためにさまざまな工夫をして現代のエスプレッソの抽出方法が出来上がっている。つまり、味を追求してそうなったわけで、量を追求したわけじゃないのだ。
 エスプレッソコーヒー主体のコーヒーショップというのは、経営者にとっても意外に”おいしい”業態なのかもしれない。
最後にちょっと気の利いたことを言って〆ようと思ったのだろうが、エスプレッソコーヒー主体のコーヒーショップというのがどれほど”おいしくない”のかはちょっと考えればわかる。
まず日本人はエスプレッソをほとんど飲まない。スターバックスで一日座って見ててもエスプレッソを注文する客など日に一人二人だ。
エスプレッソが売りのイリーカフェやセガフレードでも多くて10人かそこいらだ。それほどエスプレッソを飲む人は少ない。
つまり、エスプレッソ主体のコーヒーショップというのはそもそも存在することができるかどうかも疑問なほどである。
たいていのカフェではフードメニューがある。コーヒーメニューが平均300円、フードメニューが平均500円だとしたら、すでにエスプレッソ主体ではない。つまりエスプレッソが主体と言えば(譲歩してエスプレッソベースのドリンクが主体としても良い)、フードはケーキ等のデザートメニューだけというコーヒーショップである。
スターバックスは物販とフードの売上比率がそれぞれ3割ずつあるそうだ。つまりドリンクは4割しかない。フードや物販の比率を上げたいスターバックスは客単価を上げたいのだ。これはスターバックス自身が言っている。
マックはカフェのマーケットに参入することで、これまた客単価を上げたいに違いない。安売りしては高級路線という繰り返しをしている中で、カフェ参入はメガマックに続き高級路線ということだ。
おいしいエスプレッソを提供しようとすればコストがかかる。手間もかかる。安売りはできない。
味わってもらおうと思えば客が長居できる居心地のいい空間が必要だ。回転が悪くなる。
エスプレッソ主体のコーヒーショップは常に、客単価と回転率という二つの敵と戦わなければならない宿命なのだ。
「利益率が8割もあるなんて、コーヒーショップはさぞやお気楽極楽な商売なんだろうね~」
そんな”おいしい”話があるわけないのだが、普通の人はこう思うのかな。


Published in 雑記

2 Comments

  1. chigiri chigiri

    さすがにこの記事はひどいですね……
    記者にコーヒーの知識がまったくないのが丸わかりですね。
    深入りしたら不味い豆でもごまかせるってどんなマジックを使ってるのやら……w
    それにエスプレッソがブレンドの倍も取れないことは調べればすぐわかりますよね。
    1ショットを5~7gで約30ccのエスプレッソと、1杯10gで約120ccのドリップコーヒー。
    どうみたらエスプレッソが得してると思えるんだろう……
    ってか今記事見直して気付いたんですが、「ブレンドコーヒー」ってなんですかね?w
    エスプレッソもブレンドコーヒーなんですけどw

  2. カプッチオ カプッチオ

    うーんひどいっちゃひどいんですが、記事がひどいことよりも、一般のかたの認識ってこんな感じなのかな~ってとこが少しショックでしたね。
    カフェを開業するとなると、少なくとも自分とこのコーヒーのファンになってもらいたいわけで、そのためにはコーヒーを楽しんでもらわないといけない、そのためにはコーヒーを知ってもらうことが必要だと思います。
    いつも行ってるロースターさんもセミナーなど啓蒙活動しているけど、そういうの大事だなーと思います。

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