Skip to content →

紫の牛を売れ セス・ゴーディン

ビジネス書でたびたび紹介されていて、未読だったセス・ゴーディンの「紫の牛を売れ」をやっと読んだ。遅いよ。
紫の牛.jpg
何冊かのビジネス書でこの本からの引用をしていたので、良い本なんだろうなぁと思いつつ、発行年がちょっと古めだったため今すぐ読まなくてもいいかなどとなかなか読まなかったのだが、なんのなんの、2003年発行という古さをあまり感じさせない内容で、今のビジネスシーンにも十分(というかとっても)役に立つ本だった。
・・・もっと早く読めばよかったな。
内容を簡単に言うと、「紫の牛(非凡なもの)」を売れということを一冊を通して説いている。つまり「大衆にすでに受け入れられているものには手を出すな、ニッチを狙え、突拍子も無いことをやれ、目立て」ということを、商品が開発されて市場に出回り陳腐化して売れなくなるまでの順序を説明しながら書いている。
市場にモノが出回るには、まずは新し物好きに飛びつかれなければならない。彼らは新しければ役に立たなかろうが高かろうが問題にしない。とにかく新しければ、そして飛びつくだけの価値があれば、飛びつくのだ。
新し物好きがとびついたという事実は、現実的な消費者のうち飛び切り流行に敏感なグループへ伝播する。この段階では売上はほとんど上がらない。このグループの人数は少ない。しかしここが飛びつかなければその商品に先はない。なぜなら彼らは購入した製品の評価やクチコミを次のグループへ熱心に伝えるからだ。
ここに受け入れられれば一般大衆のうち流行に敏感な層に伝播し、さらに一周遅れて流行に乗る層に伝播する(この二つが消費者の大多数を占める)。
そして最後には流行に無頓着な層に購入されたところで、その商品の売上増加は止む。つまり、一通りみんなに行き渡ったってことだ。
紫の牛、すなわちとびきり新しくて、目立って、特別で、誰も考えつかなかったようなものがあれば、臆せずビジネスにしなさいよ、と言っているのだが、普通はそんなものをビジネスにしようとは思わない。
みんなに笑われるだけだからとか、きっと誰も見向きもしないよとか、買う人はいるかもしれないけどそれはほんの少数派でビジネスに育たないよとか、そんな考え方をしてしまいがちだ。事実、僕もそう思ってしまうときが(往々にして)ある。
しかし僕がビジネスの相手にしなければならないのは日本にいる一億の消費者でない。ましてや中国やインドの巨大マーケットでもない。僕が本当に売り込みたいのは、新し物好きという、世の中の人数からすれば無視できるほど少ないごくごく一部の人なのだ。しかし彼らの影響力はすごい。彼らに認められれば、かなりの確率でヒットを飛ばせるのだから。
そして本も終盤になり「なるほど、紫の牛か!それさえあればビジネスで成功できるんだな?」と思ってページを捲っていると、最後の一章を割いて50の紫の牛の探し方が載っているのだ。なんだ、紫の牛は自分で探さなきゃならないのか!
・・・当たり前の話だが、紫の牛そのものをこの本で紹介しているわけではない。iPodを考えついたやつ(スティーブ・ジョブスだ)はこの本を読む前に紫の牛を見つけたのだし、それが市場に出た当時は散々に酷評されたにもかかわらず、今じゃみんな持っている。セス・ゴーディンの言う通りだ。
この本は、過去に成功した人はそれぞれ彼らの紫の牛を見つけていたのだと説明しているだけに過ぎない。ただそれだけだ。しかし、紫の牛を見つけるということが成功の秘訣だということを噛み砕いて教えてくれたということだけでも、この本を読む価値はあったと思う。


Published in 書籍・雑誌

Comments

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です