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ふたつのカフェ、強烈な個性。

行きたいなあと思ってたカフェに念願叶って行ってきた。

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美味しいというのは好みに左右されることが多い。
「あの店は美味しいよ」と言われても、果たしてそれが自分にとって美味しいと思えるのかどうかというのは甚だ不確実である。客として行く以上、美味しいかどうかは自分次第だ。客観的に見て美味しいかどうかではなく、お金を払ってコーヒーを飲む一人の客として主観的に美味しいかどうかということだけだ。
しかし、カフェに行く理由は、主観的に美味しいかどうかだけではない。むしろコーヒーが美味しいかどうか(自分の好みに合うかどうか)なんてことは、些細な問題なのかも知れない。
そのカフェに流れる空気を吸うこと、そのバリスタに会いに行くこと、あるいはそのお店の椅子に座って何かを感じることが目的なのかも知れない。
なんてことを思うくらい、このふたつのカフェは、特別だった。

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RH cafe

一角には “幻のカフェ” と称されているLA発のコーヒースタンド「CAFE LEGS(カフェレッグス)」が出現。60年代の貴重なマシーンで最高のエスプレッソを提供する。
news – fashionsnap.com

ロン・ハーマンは33年前にロサンゼルスに生まれたセレクトショップである。そのショップ内にこのカフェがある。カフェは二つのエリアに分かれており、広いほうのカウンターが軽食やデザート、焼き菓子とともにFAEMAの最新式のセミオートマシンでエスプレッソ系ドリンクなどを提供している。
もうひとつ、今回のお目当ての方だが、狭いほうのカウンターでは松下氏が60年代に製造されたFAEMAのセミオートマシンでエスプレッソを淹れてくれる。このマシンは、イタリアに眠っていたものをアメリカに持ち込みレストア、そして日本に持ってきたものだそうだ。磨きこまれてはいるがその古さは隠しきれず、レバーの操作系やグループ周りの作りなど、現代のマシンを見慣れた目には奇異に映るほど。とても古いマシンだけに構造が簡単で複雑な制御はされておらず、メンテナンス性は思ったより良さそうである。しかし古さゆえにトラブルと無縁とはいかず、電気系統の修理などは、松下氏が自分で分解して秋葉原でパーツを買ってきて付け替えるそうだ。

エスプレッソを注文すると、見た目とそぐわず(失礼!めちゃ長髪で日に焼けたワイルドな見た目なんです)落ち着いた流れるような動きで古いエスプレッソマシンを操り、少しも破綻することなくカップをすっと差し出してくれた。
そしてその茶色い液体を口に入れると、ジェントルなマシン捌きからは想像もつかないような強烈な口当たりと個性的な風味にノックアウトされる。まさか!と良い意味で裏切られた感のあるカップである。
これはまさに松下氏の意思が強く感じられるコーヒーである。「このバリスタのコーヒーが飲みたい」と言われるようなバリスタはそう多くない。松下氏は間違いなく、そう言われるバリスタの一人であろう。
それがどんなカップなのかは、ぜひお店に行ってご自身で確かめていただきたい。

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FUGLEN TOKYO

ノルウェー・バリスタ・チャンピオンのEinar Kleppe Holthe (アイナル・クレッペ・ホルテ) の手によって選ばれた、ノルウェーの4つのベストロースターのコーヒーを使用。昼はエスプレッソバーとして、夜はカクテルバーとして利用できるユニークなカフェだ。
news – vogue.co.jp

1963年に生まれたFUGLENは、ノルウェーでもっとも美味しいコーヒーが飲めるカフェのひとつであるそうだ。その東京店が渋谷に登場した。と言っても、渋谷駅からはちょっと遠くて、こんなところに?と思うような一角にひっそりと佇んでいる。
北欧のビンテージ家具や食器などをふんだんに使用した店内は、僕なんかが座ってるとその価値を減じるんでは無いかと心配するくらいにおしゃれで、そのコーヒーは世界の最先端を走っているトップランナーであるかのようだ。
エスプレッソマシン、ブリューワーマシン(このふたつは決められたコーヒー)、エアロプレス、フレンチプレス、ハンドドリップ(この三つは飲みたいコーヒーをリクエストできる)で提供されるコーヒーは、どれもノルウェーのトップロースターから空輸したもの。

カウンターに腰掛けて、コーヒーを注文する。バリスタの小島氏は寡黙だが、コーヒーにかける情熱は熱いことがヒシヒシと伝わってくる。繊細な手つきでハンドドリップをし、カップを提供してくれた。
そのコーヒーは、まさに圧巻であった。作り手の意思があり、カフェのスタイルがあり、バリスタの存在があり、そしてカップに感動がある。しかしそれらのどれを取ってみても押し付けがましいところが無く、自然にふるまっており、嫌味が無い。
小島氏に写真を撮って良いか?とたずねたら、小さく手を広げて「どうぞ、どこでも」と答えてくれた。
気負いの無い、肩の力が抜けたようなスタイルだが、その立っている場所は高い山の頂で、きわめて非凡である。そしてそのカフェの席に座れば、バリスタがその山の頂に連れて行ってくれる、そんなことを思わせるカフェである。


Published in カフェ屋さん

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