僕の住む茨城県南に、とある愛すべきハンバーガー屋さんがある。Hi-5 Burgersという店なのだが、そこの店長と雑談をしている中でものすごく面白い話題があったのでちょっとここに書いてみる。
「アメリカのインディペンデント系のハンバーガー屋の手作りっぷりはすごい。なんでも手作りする。高級店もそうだし、めっちゃ安い大衆店でもそうだ。パンも焼くしベーコンも作る。そして値段の高いところはそれ相応のクオリティだし、値段の安いところは、やっぱりそれなりの若干残念なクオリティだ。安い店のベーコンなんか『これほんとにベーコンか!?』と思うような品質のものもある。しかし彼らは堂々とそれを提供する。手作りだとか声高に言わず、淡々と提供する。なぜなら手作りすることが彼らのスタンダードだからだ」
「これにはいくつかのメリットがある。もちろんデメリットもあるのだろうが、メリットだけに注目すれば、このようなことだ。まず第一にコストが低くなる。人件費をかけても材料から手作りしたほうが安い。第二にその店独特の味になるということ。美味いならもちろん言うことないのだが、多少難のある味でも『あそこじゃなきゃダメなんだ』というようなファンを作る要素になる。第三には小回りが利くことだ。仕様の変更をその日に決めても手作りならその日に製品を変えられる。メニュー変更も自由自在だ。だからどの店も基本は手作りなのだ。ハンバーガー屋は材料だけ仕入れて、あとは全部店内で作業して商品にしている。」
おおむね、こんな話だった。
これを聞いて思い出すのが蕎麦屋の旦那から聞いた話。端折って言うと、蕎麦屋は蕎麦粉と小麦粉と醤油、あとは天麩羅や種物の材料を買うだけで、商品にするまで店内で全部自前でできる、ってヤツ(もちろんほかにこまごまとした材料を買う必要があるわけだが、話を単純化しているので悪しからずご了承ください)。蕎麦屋のやってることは簡単だから、手間をかけるのさえ厭わなければ材料を買って一次加工から調理までを全て店内でできるので出来合いのものを買うことは無い、って言うのだ。その代わり、腕が悪ければ美味しいものは出来っこないし、要領が悪ければ時間ばかり取られて働いた割に売れる数が少ないということになる。
ほほう、日本の蕎麦屋とアメリカのハンバーガー屋は同じであったか、と目から鱗が落ちる思いだったのだが、さて、それでは僕の所属するコーヒー屋はどうなんだろうか?
コーヒーの生豆(これ『なままめ』と読みます。僕も業界に入るまで読み方知りませんでした)を買って焙煎してコーヒーを抽出して提供する。おお、蕎麦屋やハンバーガー屋と同じことができるじゃないか!
よく、カフェで「手作りスイーツ」「自家製パスタ」などと看板に書いてあるところがある。そういう店のコーヒーは大手ロースターの焙煎したものを購入していたりする(回転看板に○○コーヒーなどと書いてあったりとか)。こんなお店こそ、コーヒーも自家焙煎してみたりしたらいかがだろうか?
手作りとか自家製というキーワードを掲げるということは、それなりに自分で作ることに意味を感じているということだろうし、出来合いではないというところに付加価値を見出しているのだと思う。それならば、コーヒーも自分で焙煎したら良いと思う。
あるいはコーヒー専門店。専門店ですら焙煎したコーヒーを仕入れているところが少なくないのが現実だ。もしかしたら、自分で焙煎したら、より優れたロースターが焙煎したものよりも味が落ちるという理由なのかも知れない。自分でローストする手間や時間が無いということかも知れない。あるいは焙煎機の設置スペースが無いのかもしれない。しかしそこは手網焙煎でもいいからチャレンジしてもらいたいなと思う。
その理由は、まさにアメリカのハンバーガー屋のくだりで書いたメリットと同じことだ。
日本の蕎麦屋とも同じ理由だ。
安く出来、特徴的であり、小回りが利く。
品質が低くても、それはそれで「ウチの味なんだよ」ということで、堂々を焙煎して、堂々と売ればいいと思う。
焙煎をはじめるようになってから、本当にそう思うようになった。なぜなら僕が焙煎したコーヒーはこの世界で最高のコーヒー、では無いからだ。悲しいけどはっきりとそれは言える。最高では無い。
しかし、僕と同じように焙煎できる人もほかにはいないことも事実だ。僕の焙煎したコーヒーは『僕の焙煎したコーヒー』以上でも以下でも無い。
ここで声高に自家焙煎最高!イェイ!などと言うつもりは無い。何を言いたいかというと、安く出来て、特徴的で、小回りが利くものをやったらいいんじゃないの?ってことだ。デメリットはなんとかつぶしていくとして、これだけメリットがぶら下っているのだから、やっぱり自分で焙煎してみるだけの価値はあると思う。
特に、今までコーヒーの自家焙煎など考えもしなかったような方、是非検討してみて欲しい。
世界中であなただけにしか作れないコーヒーというものが、きっとあるのだから。
丸山珈琲所属・鈴木樹さんがWorld Barista Championshipで世界4位という好成績を収めた。すばらしい。
日本のエスプレッソ文化も世界に遜色ない、いや世界でもトップクラスであるということを証明してもらった気分だ。
バリスタだけでは成し遂げられなかったと思う。チームとして臨み、そして全員がすばらしいパフォーマンスだったのだろう。それがこのような成績につながったのだと思う。
おめでとう、鈴木樹さん。おめでとう、丸山珈琲。
賛成賛成!!
と同時に、いつも自分の焙煎はこれで良いのかとふらふらして不安げな気持ちが一掃されました。
ありがとうございます。
ちょっと離れていて中々会えない友人にコーヒーを送っているのですが、「他で何度か買ったのだけどやっぱりあなたのが美味しい」と言ってくれます。嬉しいです。今のところ知り合い以外には飲んでもらっていませんので、もしかしたら私のコーヒーが美味しいといってくれる人がもっと居るかもしれません。今日の記事でな~んか心の底から焙煎しようというパワーがムクムク湧き上がってきました!!
色んなお店の自家焙煎・・・良いですね~。あそこはお蕎麦も美味しいけどコーヒーが又絶品なんて理想ですね。家は田舎で新しく出来た「自家焙煎」という看板のお店に行きましたら、堂々と「ここではやっとらん、別のところで頼んでやってもらっとる」。それって自家焙煎??
言葉だけが必要だったんだなあ・・とガッカリしました。
これからはもっともっと身近なコーヒーが美味しくなっていくことを願っています。
珈子さんこんにちは!
こちらこそ、珈子さんのコメントに励まされた思いです。
僕も以前は「こんなんじゃとても人様にお出しできない、世の中にはもっと美味しいコーヒーがたくさんある」などと考えてました。
しかしそれはただの言い訳だったんではないかとおもってます。人に否定されるのが怖かったのですね。
真面目に一生懸命やれば、そこに共感してくれる人がいる。たとえ世界一のクオリティでなくても好きになってくれる人がいる。それを学ぶことができました。
だから今ならこう言います。「これが僕の味です、世界一ではないけど、僕なりの精一杯です。どうぞよろしく」
というわけで、お互い、これからもガシガシ焼いて頑張りましょう!
何よりも大切なのは品質だと思います。
手作りでも低品質なら、ただマズイだけです。
でも、もし同程度の品質なら既製品より手作りの方が良いですね。
不味かろう安かろうは日本では許されません。
弾丸トラベラーさんこんにちは!
当ブログ的には飲食店(カフェ・喫茶)、小売店(豆売り)のどちらかということになろうかと思いますが、そのどちらにしても、商品やサービスに対する対価を支払うということでは同じことだと思います。
一般に、そこには強制力が働きませんので、売れるか売れないかは品質の高低だけで決まるものではありません(品質が良くても高すぎては売れませんし、品質が低くても充分に安ければ売れます)。
さてそこで問題なのは、ただマズイだけの品物を安く売る場合です。例としてコーヒーが一杯10円だとします。恐ろしくマズイとしても10円なら売れると思います。しかし10円では商売が成り立たないでしょう。
少なくとも商売が成り立つ程度の利益が取れて、なおかつ品質の悪さを納得できる程度の価格設定にできれば、マズイものでも商売になると思います。
僕がそういう商売をしたいということではありませんが、誰かがそういう商売をしているとしても、それはそれでいいと思います。
例えが悪いですが、牛丼チェーンはあの価格だからこそ、あのクオリティが許されるのだろうと思います。というか、あのクオリティでもあの価格なら充分に集客できるわけです。美味い不味いは好みによると思いますが、明らかに高品質ではないあの牛丼を主力商品として、あれだけのチェーンを維持できるというのは良い例かと思います。