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スターバックス in 映画「アイアムサム」

映画「アイアムサム」で、ショーン・ペン演じる知的障害を持つサムが、スターバックスで働くシーンがある。
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彼はお客の注文が何であれ、カップを手にした客に「Wonderful choice!」といちいち声をかける。
頭の回転がゆっくりでも、動作がニブくても、あるいはお客にコーヒーをひっかけてしまっても、いつも一生懸命、いつもニコニコして「Wonderful choice!」と声をかけるサムは人気者だ。
映画はこの後、娘(ダコタ・ファニング)と弁護士(ミシェル・ファイファー)を交えて二転三転し、予告編などで目にする印象的なシーン、ブランコや風船のシーンが出てくるわけだが、僕はこのスターバックスで働くサムのシーンがすごく好きだ。
日本では、注文するとたいてい「では注文を繰り返します」とやられる。
注文して「ありがとう」と言われることはない。ましてや「それはいい選択です」などとは天地がひっくりかえってもあり得ないだろう。
それはすなわち、間違った注文を受けてませんよ、というポーズであり、あのとき確認したのですから持って行った皿が違うなどと言われても知りませんよ、という自己防御の姿勢である。
なんてこった。客はゆったりとくつろいで食事やお茶を楽しみたいと思って店に来たというのに、店は自分のことしか考えてないじゃないか!
ホスピタリティの欠如である。
注文を間違うと、客が怒る。
皿が無駄になる。
作り直さなきゃならない。客に謝らなければならない。怒った客はほかの客へ迷惑になる。その場にいた客は二度と来店しないかも知れない。怒った客はあることないことを吹聴してまわるに違いない。それが原因で店をたたむ羽目になってしまうかも知れない。
だから注文を繰り返すのだ。
ケアンズでは店員の態度が良くないと、日本人はよく言う。
ニコリともしない、ぶっきらぼうだ、ガムかんでる、髪がボサボサ、清潔じゃない・・・
ところが朝ごはんを食べようとカフェに行ったら、まず「Good morning!」と言われた。サンドイッチを注文したら「It’s dericious!」と言われた。
たしかに日本のようなマニュアル通りの作法というか手順というのは無さそうだ。ガムをかんでる店員も実際にいた。
しかし日本のファミレスのように、どこの店(違うチェーンの店ですら、だ!)でも判で押したような対応をされるということはなく、店員が彼(彼女)の精一杯で接客をしようとしている。だから店や店員によって対応がまちまちなのだ。
朝なんだから「おはよう」、客がオススメの皿を注文すれば「それはおいしいですよ」、ごく普通の人間とごく普通の人間の会話である。
ニコっとしないのは彼(彼女)が無愛想なせいだ。
ガムをかむのは口臭隠しかも知れない。
飲食店なのに指輪がじゃらじゃらしてるのは、ジュエリーが大好きだからだろう。
身なりや表情は日本の接客業と比べるべくもないが、彼(彼女)らは朝であれば誰にでも「おはよう」と言う。彼(彼女)らのできる最大のホスピタリティを発揮しているのだ。
だから、その接客を受ける側は、不愉快に思わない。アイアムサムでサムが「Wonderful choice!」と声をかけるのも精一杯のホスピタリティだ。スターバックスのスタッフの中では飛びぬけてダメな店員だ(マシンを操作すればミルクを撒き散らすし、注文は受け違え、三つも頼まれたら誰がどれを注文したかわからなくなる)。しかし、彼のホスピタリティは客に届く。
完璧なマニュアルを作るより、常に自分の持てるホスピタリティを十分に発揮するほうが難しかろう。
でも難しいほうを選択するほうが「Wonderful choice!」に違いない、と信じている。


Published in 雑記

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